「父の相続手続きをしていたら、母も亡くなってしまったんです」
Aさんは、困惑した表情で相談に来られました。
父が亡くなり、相続人は母と子ども2人。
遺産分割協議を進めている最中に、母も他界。
さて、この場合、どの相続から処理すればよいのでしょうか。
これが「数次相続」の典型例です。
数次相続とは、相続手続きが完了しないうちに、次の相続が発生することをいいます。
今回のケースでは、
① 父の相続が発生
② 父の遺産分割が未了
③ 母が死亡
④ 母の相続が発生
という流れです。
相続が“連続”して起こるため、関係が一気に複雑になります。
混乱の原因はここにあります。
父の相続が終わっていないのに、母の相続が始まる。
しかし母は、父の相続人でもありました。
つまり、母の相続財産の中には、
「父から相続するはずだった財産」
が含まれる可能性があるのです。
父の遺産を分けないまま、母の遺産分割を進めることはできません。
順番と整理が不可欠です。
さらに問題を複雑にするのが、相続人の変動です。
父の相続では、
・母
・子2人
の3人が相続人でした。
しかし母が亡くなると、母の相続人が加わります。
もし母に前婚の子がいた場合、相続人はさらに増える可能性があります。
相続人の範囲が広がることで、調整の難易度は一気に上がります。
数次相続では、戸籍の収集も倍になります。
・父の出生から死亡まで
・母の出生から死亡まで
それぞれを確認する必要があります。
「一度集めたから大丈夫」では済みません。
相続は“人”を基準に整理します。
相続人が増えれば、確認すべき範囲も広がるのです。
・数次相続は相続が連続する状態
・順番を誤ると手続きが止まる
・相続人が増える可能性がある
・戸籍収集は倍の労力がかかる
数次相続は、珍しいケースではありません。
高齢化社会では、十分に起こり得る現実です。
次回の中編では、数次相続で特に揉めやすいポイントと実務上の整理方法を解説します。
・数次相続の全体整理
・相続関係説明図の作成
・戸籍収集・相続人確定
・遺産分割協議書作成支援
・他士業と連携した総合相続対応