前編では、係争中の財産も原則として相続の対象になり得ること、もっとも、その内容や価値が未確定なため、通常の財産より遺産分割が難しくなることを見てきました。
中編では、こうした財産がある場合でも、他の財産を先に分けたり、係争中の部分だけ別枠で扱ったりする考え方があることを整理しました。
では、こうした相続で実際に揉めやすいのは、どのような場面なのでしょうか。
後編では、係争中の財産を含む相続でトラブルを防ぐための注意点を整理します。
係争中の財産で特に揉めやすいのは、その財産をどのくらいの価値として見るかです。
たとえば、1,000万円を請求している訴訟があっても、相続人の一人は
「かなり勝てる見込みがある」
と考えるかもしれません。
一方で、別の相続人は
「証拠が弱いから大して回収できないのではないか」
と見るかもしれません。
このように、まだ結論が出ていない以上、評価はどうしても予測になります。
そして、この予測の違いが、そのまま不公平感につながります。
つまり、係争中の財産は、事実そのものよりも、「どう見積もるか」で対立が起きやすいのです。
もう一つ大きいのが、係争中の財産に関する訴訟や交渉を、今後誰が担うのかという問題です。
相続人の一人がその権利を引き継ぐ場合、単に財産を受け取るだけでなく、弁護士との打合せ、資料収集、裁判対応、場合によっては敗訴のリスクまで背負うことになります。
ところが、他の相続人から見ると、
「勝てば大きな利益になるのだから、その人が得ではないか」
と映ることがあります。
逆に、引き受ける側からすると、
「不確実で手間のかかる案件を背負うのに、簡単に得だと思われても困る」
という感覚になります。
この負担と見返りのバランスが、実務ではとても難しいところです。
係争中の財産がある相続では、
「とりあえずこの人がやっておいて」
「結果が出たらそのとき考えよう」
という曖昧な進め方が、後で大きな火種になることがあります。
たとえば、訴訟費用は誰が負担するのか、和解するかどうかの判断は誰がするのか、最終的に回収できた金額をどう扱うのか、といった点が決まっていないと、訴訟の途中や終了後に再び争いになりやすくなります。
だからこそ、係争中の財産を別枠で扱う場合でも、
・誰が対応するのか
・費用をどうするのか
・結果をどう扱うのか
をできるだけ見える形にしておくことが重要です。
・係争中の財産は「見込み額」の評価で揉めやすい
・訴訟対応の負担と見返りのバランスも問題になる
・曖昧な合意のまま進めると後で再度争いになりやすい
・対応者、費用負担、結果の扱いを整理しておくことが重要
係争中の財産がある相続では、財産そのものの問題だけでなく、誰が何を担うのかという手続面でも対立が起きやすくなります。
だからこそ、評価、負担、費用、結果の扱いを早めに整理し、曖昧なまま進めないことが、相続全体の混乱を防ぐポイントになります。
・戸籍収集など相続手続きの初動支援
・相続人調査、相続関係説明図の作成
・遺産分割協議書作成支援
・係争中の財産を含む相続関係全体の整理
・必要に応じた弁護士、司法書士等との連携