前編では、親が子の借金や支払いを肩代わりしていた場合、それが相続の場面で「特別受益」にあたるかどうかが問題になること、そして、すべての肩代わりが直ちに特別受益になるわけではないことを見てきました。
では、実際にはどのような場合に特別受益性が強く問題になるのでしょうか。
中編では、生前の肩代わり金が相続実務でどのように見られやすいのか、その判断ポイントを整理します。
まず大きなポイントになるのが、肩代わりされた金額です。
例えば、数万円から十数万円程度の一時的な援助であれば、家族間の扶養や生活支援の範囲と見られることもあります。
しかし、住宅ローンの一部を長年にわたり負担していた、事業資金の返済を親がまとめて肩代わりしていた、といった場合には、相続分の前渡しに近い性質を持つとして問題になりやすくなります。
つまり、相続で注目されるのは、「援助があったかどうか」だけではなく、それがどの程度の経済的利益をもたらしたのかという点です。
金額が大きいほど、他の相続人の不公平感も強くなりやすくなります。
肩代わり金が一度きりだったのか、それとも継続的に行われていたのかも重要です。
たとえば、一時的な病気や失業で生活が苦しかったため、親が短期間だけ支援したというケースと、何年にもわたって生活費やローン返済を親が負担していたケースでは、評価が変わってきます。
また、その支出が何のためのものだったかも見逃せません。
日常生活の最低限の扶養に近い支援なのか、住宅取得、事業維持、借金返済のように、受けた本人の資産形成や経済的地位の維持につながるものなのかによって、特別受益性の見え方は大きく異なります。
実務では、ここも大きな論点になります。
肩代わり金は、贈与契約書のような明確な書面が残っていないことが多く、通帳の動きやメモ、家族の記憶をもとに検討することになりがちです。
そのため、
「これは返す予定の立替えだった」
「いや、実質的な贈与だった」
と評価が食い違いやすくなります。
また、親の意思や、他の相続人への援助状況も無視できません。
一人だけ特別に支援していたのか、他の子にも別の形で援助があったのかによって、相続人間の見え方は変わってきます。
だからこそ、肩代わり金は金額だけでなく、家族全体のお金の流れの中で整理する必要があります。
・肩代わり金は金額が大きいほど問題になりやすい
・継続性や支出の目的も重要な判断要素になる
・親の意思や家族全体の援助状況も無視できない
・証拠が曖昧だと特別受益をめぐる争いになりやすい
生前の肩代わり金が特別受益にあたるかどうかは、単純な一言で決まるものではありません。
金額、期間、目的、親の意思、家族全体の事情などを総合して見ていく必要があります。
次回の後編では、こうした争いを防ぐために、生前の段階でどのような備えをしておくべきかを整理します。
・戸籍収集など相続手続きの初動支援
・相続人調査、相続関係説明図の作成
・遺産分割協議書作成支援
・生前贈与、肩代わり金を含む相続関係全体の整理
・必要に応じた弁護士、税理士等との連携