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    「こんなことまで書かなくてもよかったのに…」

    遺言書を読み終えた後、長男のAさんはそうつぶやきました。

    亡くなった父は、生前から几帳面な人でした。
    自分の死後に家族が揉めないようにと、公正証書遺言を作成していたのです。

    遺言の内容自体は明確でした。

    ・自宅不動産は長男Aさんへ
    ・預貯金は長女Bさんへ
    ・残りの財産は兄妹で分ける

    遺産分割の内容としては、特別不公平というほどのものではありません。

    しかし、問題となったのは遺言書の最後に書かれていた付言事項でした。

    そこには父の言葉として、次のような文章が残されていました。

    「長男のAは、長年家業を手伝ってくれた。そのため自宅はAに残すことにした。」

    この一文を読んだ瞬間、場の空気が変わりました。

    長女のBさんが静かに言いました。

    「じゃあ私は、何もしてこなかったってこと?」

    父としては、感謝の気持ちを書いただけだったのかもしれません。

    しかし受け取る側にとっては、評価や比較の言葉として響いてしまうことがあります。


    ■付言事項とは何か

    遺言書には、「付言事項(ふげんじこう)」と呼ばれる部分を記載することがあります。

    付言事項とは、遺産の分け方とは直接関係しない遺言者の想いや説明を書く部分です。

    例えば、

    ・なぜこの分け方にしたのか
    ・家族への感謝の言葉
    ・今後の家族関係への願い

    などが書かれることがあります。

    法律上の効力はありませんが、遺言者の気持ちを伝える役割があります。

    そのため、

    「家族の誤解を防ぐ」
    「円満な相続につながる」

    といった効果が期待されることもあります。


    ■想いが誤解を生むこともある

    しかし実務では、付言事項が思わぬ波紋を呼ぶことがあります。

    特に問題になりやすいのが、

    ・特定の相続人を評価する表現
    ・他の相続人を比較するような内容
    ・過去の家族関係への言及

    などです。

    書いた本人にはそのつもりがなくても、読む側の受け取り方は様々です。

    結果として、

    「父は私のことをそう思っていたのか」

    という感情が生まれ、遺産分割そのものよりも感情の対立が強くなるケースもあります。


    ■遺言は“法律文書”であると同時に“家族への手紙”

    遺言書は法律文書ですが、家族にとっては

    最後のメッセージ

    でもあります。

    だからこそ、

    ・何を書くか
    ・どこまで書くか
    ・どんな表現にするか

    によって、相続後の家族関係が大きく変わることがあります。


    ■前編まとめ

    ・付言事項は遺言者の想いを伝える部分
    ・法律上の効力はない
    ・しかし家族関係に大きな影響を与えることがある
    ・表現次第では争いの火種になることもある

    次回の中編では、付言事項が原因で相続トラブルが拡大する具体的なケースと、注意すべきポイントについて解説します。


    ■小樽つちや行政書士事務所でサポートできること

    ・遺言書作成サポート(自筆証書・公正証書)
    ・付言事項の内容整理と文章作成支援
    ・相続人関係を踏まえた遺言設計
    ・遺産分割協議書作成支援
    ・弁護士・税理士と連携した相続対策サポート


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