前編では、相続した家に誰かが住み続けている場合、
話し合いが感情的にこじれやすい理由を整理しました。
中編では、この問題を法的にどう整理するのか、
実務で必ず押さえるべき考え方を解説します。
相続が発生すると、被相続人が所有していた家は、
相続人全員の共有財産になります。
重要なのは、住んでいる人がいても、
法律上は「その人の単独所有」にはならないという点です。
つまり、住んでいる相続人も、他の相続人も、
同じ立場の共有者として扱われます。
この前提を理解しないまま話し合いを始めると、
主張が噛み合わなくなります。
住み続けている人の立場を考えるうえで、
よく問題になるのが使用貸借か、賃貸かという点です。
生前に
・家賃を払っていなかった
・契約書もなかった
このような場合、法律上は
「無償で貸していた(使用貸借)」
と評価されることが多くなります。
使用貸借の場合、相続によって貸主が変わると、
契約が終了する可能性があります。
つまり、いつまでも住み続けられる権利ではない
という整理になります。
では、相続人の一人が共有者として住み続けることは
認められるのでしょうか。
結論としては、他の共有者の同意があれば可能です。
しかし、同意が得られていない場合、
他の相続人から「使用料相当額」を請求される可能性も出てきます。
ここで初めて、「住み続けたい」側にとって
現実的な負担が見えてきます。
感情的に対立が深まると、「出て行ってもらえないのか」
という話になります。
法的には、遺産分割が終わっていない共有状態では、
簡単に明け渡しを強制することはできません。
一方で、話し合いを拒否し続けたり、
他の相続人の権利を侵害している場合には、
法的手段が検討されるケースもあります。
ただし、時間も費用もかかるため、
現実的な選択肢とは言い難いのが実情です。
中編で最も重要なのは、感情の問題と、権利の問題を切り分けて考えることです。
・かわいそうだから住ませたい
・長年住んでいたのだから当然
こうした気持ちは尊重しつつも、法的な整理をしなければ、
話し合いは前に進みません。
・相続後の家は相続人全員の共有
・住んでいるからといって単独の権利はない
・使用貸借か賃貸かで扱いが変わる
・無条件で住み続けられるわけではない
・感情と権利を切り分けることが重要
次回の後編では、明け渡し問題の現実的な落としどころ、
揉めないための具体的な対応策を解説します。
・相続不動産の権利関係整理
・使用貸借・賃貸関係の整理
・居住者がいる場合の分割方針検討
・遺産分割協議書への反映
・感情対立を踏まえた実務的サポート