相続の相談で、近年とても増えているのが、次のようなトラブルです。
「遺産の分け方はまとまったのに、 ペットの行き先で話が進まなくなりました」
ペットはお金ではありません。
しかし、実務では、遺産よりも深刻な対立に発展することがあります。
今回は、なぜ「ペットの行き先」が相続トラブルになるのか、
その入口部分を整理します。
亡くなったのは母・Aさん。
一人暮らしで、長年、犬を一匹飼っていました。
相続人は次の3人です。
・長男(実家から離れて生活)
・長女(ペット可住宅だが多忙)
・次女(動物は苦手)
母は生前、「この子のことだけが心配」と何度も口にしていましたが、
具体的な引き取り先までは決めていませんでした。
葬儀後、遺産分割の話は比較的スムーズに進みました。
ところが、最後に残ったのが、ペットの問題でした。
相続人の誰もが、「誰かが引き取るだろう」と考えていました。
しかし、現実は簡単ではありません。
・住環境の問題
・仕事や介護との両立
・動物アレルギー
・経済的・精神的な負担
それぞれに事情があり、簡単に「私が引き取ります」とは言えなかったのです。
ここで多くの方が誤解しているのが、ペットの法的な位置づけです。
ペットは、法律上は「物」として扱われますが、
預貯金や不動産のように分けることはできません。
また、「相続すれば自動的に引き取られる」という制度もありません。
この曖昧さが、相続人同士の責任の押し付け合いを生みます。
ペット問題で厄介なのは、感情が強く絡む点です。
・「引き取らないなんて冷たい」
・「無責任だ」
・「可哀想だと思わないのか」
こうした言葉が飛び交うと、相続の話は一気にこじれます。
誰もペットを嫌っているわけではなくても、現実的な事情を口にすると、
責められているように感じてしまうのです。
遺産分割は、時間をかけて調整できます。
しかし、ペットは生きています。
・世話をする人
・餌や散歩
・医療費
今日・明日の問題として、対応を迫られます。
だからこそ、話し合いが感情的になりやすく、相続全体に影響を及ぼします。
・ペットの行き先は相続以上に揉めやすい
・「誰かが引き取る」という思い込みが危険
・ペットは分けられない存在
・感情が対立を深めやすい
次回の中編では、
ペットは法的にどう扱われるのか、
相続とペット問題の整理の仕方を、
実務目線で解説します。
・相続とペット問題の整理
・相続人間の役割・負担の見える化
・感情対立を踏まえた話し合い支援
・遺言書作成時のペット対策助言
・相続トラブルを防ぐための事前整理