前編では、遺留分という制度の基本と、
中編では、遺留分侵害額請求の計算方法や請求の流れを整理しました。
後編では、
実際に遺留分侵害額請求が持ち上がったとき、どう向き合い、どう着地させるか、
実務で重要になる考え方をまとめます。
遺留分侵害額請求がこじれやすい最大の理由は、
「お金の話」であると同時に、
家族の評価や過去の役割が否定されたと感じやすい点にあります。
請求される側は、
「自分が一番親の面倒を見たのに、なぜ金を払わなければならないのか」
と感じやすく、
請求する側は、
「自分は軽んじられていたのではないか」
という思いを抱きがちです。
この感情の対立が、
話し合いを難しくします。
実務でよく聞かれるのが、
「請求された金額を一括で払えない」という相談です。
結論から言うと、
払えないからといって請求自体が消えるわけではありません。
ただし、
・分割払い
・支払期限の調整
・代替案の提示
といった形で、
話し合いによる解決が図られることは多くあります。
重要なのは、
感情的に拒否するのではなく、
現実的な支払可能性を示すことです。
話し合いがまとまらない場合、
訴訟という選択肢もあります。
しかし訴訟には、
・時間
・費用
・精神的負担
が伴います。
さらに、
勝ち負けがはっきりする分、
家族関係が完全に断絶するリスクも高まります。
そのため実務では、
訴訟に進む前に、
「どこで折り合うのが現実的か」を見極めることが重要です。
トラブルを防ぐために最も有効なのは、
生前の準備です。
・遺言書で理由を丁寧に説明する
・生前贈与の扱いを明確にしておく
・家族に方針を伝えておく
これだけでも、
「なぜこうなったのか分からない」という不満は大きく減ります。
・遺留分トラブルは「金額」より「感情」でこじれやすい
・支払えない場合でも、話し合いの余地はある
・訴訟は最終手段であり、関係断絶のリスクが高い
・生前の説明と準備が、最大のトラブル防止策
遺留分侵害額請求は、
法律として認められた権利である一方、
家族関係に大きな影響を与える制度です。
だからこそ、
制度を正しく理解し、感情と現実のバランスを取りながら着地させることが、
何より重要になります。