「実家は父名義のままだけど、特に困っていないし…」
相続の相談現場で、長年よく聞かれてきた言葉です。
しかし2024年、ついに状況は大きく変わりました。
相続登記の義務化により、「名義をそのままにしておく」という選択肢は、原則として許されなくなったのです。
前編では、相続登記義務化とは何か、そしてなぜ今になって問題が顕在化しているのかを、ケースを通して整理します。
被相続人は祖父。
実家の土地・建物は、祖父名義のまま30年以上相続登記がされていませんでした。
父の代では、
「兄弟でもめていないし、使っているのは自分たちだから問題ない」
と考え、そのまま放置。
ところが父が亡くなり、相続人が子世代に移ったことで事態が一変します。
市役所から届いたのは、
「相続登記を行ってください」という通知。
初めて家族は、“放置していた名義”が問題になることを知りました。
相続登記義務化とは、
不動産を相続した場合、一定期間内に名義変更(相続登記)を行うことを法律上の義務とした制度です。
正当な理由なく登記をしない場合、
過料(罰金)の対象になる可能性があります。
これまで相続登記は「努力義務」に近く、
実務上は放置されがちでした。
その結果、日本中で「誰のものか分からない土地」が大量に発生したのです。
相続登記をしないまま放置すると、
次のような問題が連鎖的に発生します。
特に怖いのは、
「今は困っていない」が、次の世代で一気に破綻する点です。
背景にあるのが、
いわゆる「所有者不明土地問題」です。
相続登記がされないまま、
相続 → 放置 → さらに相続
を繰り返した結果、
公共事業や防災対策すら進められない土地が急増しました。
そこで国は、
「相続の時点で整理する仕組み」に舵を切ったのです。
・相続登記は「やってもいい」から「やらなければならない」手続きに変わった
・名義放置は、次の世代で深刻な問題を引き起こす
・相続登記義務化は、所有者不明土地問題への対策
・「困ってから」ではなく「相続した時点」での対応が重要
次回(中編)では、
**相続登記義務化の具体的な内容(期限・対象・罰則)**と、
「いつまでに、何をすべきか」を詳しく解説します。