前編では、特別受益とは何か、そして遺言書に書かれていても必ずしもそのまま通るわけではない、という点を整理しました。
中編では、実際に「どこまでが特別受益として扱われるのか」、判断の分かれ目を見ていきます。
特別受益かどうかを判断するうえで、最も重要なのは
その援助が“親として通常期待される範囲”を超えているかです。
たとえば、
・子どもの生活費の仕送り
・一般的な学費や留学費用
・病気や失業時の一時的な援助
これらは、金額や状況によっては、
「親として自然な扶養の範囲」と評価され、
特別受益に当たらないとされることがあります。
一方で、
・住宅購入資金として数百万円〜数千万円を援助
・事業開業のためのまとまった資金提供
・特定の子だけに集中した高額援助
といった場合は、特別受益と判断される可能性が高くなります。
誤解されがちですが、
「いくら以上なら特別受益」という明確な金額基準はありません。
判断では、
・被相続人の資産規模
・援助を受けた時期
・他の兄弟とのバランス
・援助の目的(生活か、資産形成か)
などが総合的に考慮されます。
たとえば、同じ500万円の援助でも、
資産数億円の親と、資産がほとんどない親では、
評価が変わることもあります。
「何十年も前の話だから、今さら関係ないのでは?」
という疑問もよく聞かれます。
しかし、特別受益には原則として時効はありません。
相続開始時点から見て、
その援助が相続財産の前渡しと評価されるなら、
過去の援助でも問題になります。
もっとも、
・資料が残っていない
・当時の事情が不明確
といった場合、立証が難しくなり、
実務上は争点化しにくいケースもあります。
遺言書に
「○○は特別受益があるため相続分を減らす」
とだけ書かれていると、かえって争いの火種になります。
実務では、
・いつ
・いくら
・何のために
援助したのかを、できる限り具体的に記載することが重要です。
抽象的な表現は、
相続人それぞれの解釈を生み、
感情的対立を深める原因になります。
・特別受益かどうかは「親として通常の援助」を超えるかが基準
・金額だけでなく、資産規模や兄弟間のバランスが重視される
・古い援助でも、特別受益と判断される可能性はある
・遺言書に書くなら、具体性が不可欠
次回(後編)では、
特別受益をめぐるトラブルを防ぐための実務的な対処法と、
相続人が取るべき現実的な選択肢を解説します。