前編では、相続人の一人(次男Dさん)と連絡が取れず、遺産分割協議が進まなくなるケースを紹介しました。相続手続きは原則として相続人全員の関与が必要で、まずは戸籍・戸籍の附票・住民票など公的記録で住所を追い、状況を確認するところが出発点でした。
中編では、調査の結果「住所は分かった(=郵便は届く可能性がある)」場合に、どう連絡し、どう協議へ戻していくかを整理します。
数年音信不通の相手に、突然電話すると警戒され、話がこじれやすくなります。
そこで実務では、まず 書面(手紙)で丁寧に 連絡するのが基本です。
伝えるべきは、責める言葉ではなく次の3点だけ。
①被相続人が亡くなった事実
②相続手続きが必要で、協議参加が求められること
③連絡先・返信方法(期限の目安も添える)
「出てこないと困る」「迷惑をかけている」といった言葉は逆効果になりがちです。目的は“協議の場に戻ってもらう”こと。感情の清算は後回しです。
書面の送付は、次のように段階を踏むと成功率が上がります。
いきなり内容証明にすると「敵対」と受け取られ、協議復帰が難しくなることがあります。
一方で、後に裁判所手続きを検討する可能性がある場合は、どの段階でも 発送日・宛先・到達状況を記録 しておくことが重要です。
Dさんから返信があり、協議に参加する意思が示されたとしても、次の壁があります。
「今さら何の用だ」「昔のことを蒸し返すな」など、感情のもつれです。
ここで有効なのが、議題を2つに分けるやり方です。
遺産分割協議書は“感情の判定書”ではありません。署名押印まで到達するためには、手続きの整理を先に進め、揉めやすい論点は小分けにして合意を積み上げます。
中編の段階で押さえたいのは、連絡が取れた場合の進め方だけでなく、
「返事がない」「協議を拒否する」場合に備えて、証拠(連絡履歴)を残すことです。
この蓄積が、次回(後編)で扱う 家庭裁判所手続き(不在者財産管理人等) への橋渡しになります。
・住所が分かったら、まずは書面で丁寧に連絡
・送付は段階的に。到達性と記録を意識する
・協議に戻ってきたら「手続き」と「感情」を分けて進める
・反応がない場合に備え、連絡履歴を残して次の一手へ
次回(後編)では、住所が追えない/届かない/協議拒否のときの裁判所手続き(不在者財産管理人・失踪宣告など)の考え方を解説します。