調停と話し合いを重ねる中で、後妻Iさんと前妻の子Gさん・Hさんは、
互いの立場と気持ちを少しずつ理解し始めました。
Iさんにとって自宅は生活の基盤であり、夫Fさんとの思い出そのもの。
一方、Gさん・Hさんにとっては「父の財産を公平に扱いたい」という気持ちがあり、
長年疎遠だった関係に複雑な想いを抱えていました。
調停委員から出た言葉が、彼らの心を少し動かします。
「法律は公平を守り、
感情は家族を守ります。
その両方に折り合いをつける場所を探しましょう。」
最終的には、
決して誰にとっても“完璧”ではありませんが、
それぞれの立場に一定の理解を示した、現実的な落としどころでした。
協議の終盤、Gさんが静かにこう言いました。
「父が再婚してから距離ができて、寂しかったんです。」
これを聞いたIさんは、涙ぐみながら言いました。
「ごめんなさい。でも、私も父さんを大切にしていました。」
法律では割り切れない“家族の感情”が、ようやく交わった瞬間でした。
連れ子Jさんも、
「私には相続権はない。でも、この家族の一員だったことは本当です。」
と控えめに言葉を添えました。
“再婚家庭”の相続では、
法的な立場と、心の立場が一致しないことが多くあります。
だからこそ、時間をかけて向き合うことが大切なのです。
今回のケースを通じ、Iさんは強く実感しました。
「夫が元気なうちに、法的な準備をしておくべきだった」と。
再婚家庭で特に重要なのは、次の3つです。
これらを整えておくことで、
“気持ち”と“法”のズレを最小限にでき、
結果として家族全体の安心につながります。
・再婚家庭の相続リスク分析・相続関係説明図の作成
・遺言書・公正証書の作成サポート
・連れ子への承継を可能にするための養子縁組相談
・遺産分割協議書・説明資料の作成
・司法書士・税理士・弁護士との連携による総合支援
“家族の形”が多様になる現代では、相続もまた複雑になります。
しかし、法的準備と丁寧なコミュニケーションがあれば、
争いを防ぎ、家族の絆を次の世代へつなぐことができます。
次回からは、第7話として新たなケースを取り上げていきます。
引き続き「争族を防ぐ視点」から、皆様に役立つ知識をお届けします。