現代の家族の形は、かつてよりずっと多様になっています。
離婚・再婚・事実婚——。
こうした家庭の変化がある中で、「誰が相続人になるのか」「どこまで権利が及ぶのか」は、ときに非常に複雑になります。
特に、「後妻と前妻の子」が関わる相続では、感情のすれ違いと法的な整理の難しさが重なり、深刻なトラブルに発展するケースが少なくありません。
今回は、その典型例を3回シリーズで取り上げます。
今回の主人公は、会社員だったFさん(男性・70歳)とその家族。
Fさんは20代の頃に前妻との間に息子Gさん、娘Hさんをもうけましたが、40代で離婚。
その後、50代で再婚し、後妻Iさんと新たな家庭を築きます。
Iさんには連れ子Jさん(成人済み)がいましたが、Fさんとは養子縁組をしていませんでした。
Fさんは「今の妻を支えたい」「前の子どもたちとも仲良くしたい」と願っていましたが、
再婚後は前妻の子たちとの交流が次第に減っていきました。
それでも、心の中では「いつか一緒に集まって食事をしたい」という想いを持ち続けていたそうです。
Fさんが70歳を過ぎたある日、急な心筋梗塞で急逝します。
残されたのは、後妻Iさんと前妻の子どもGさん・Hさん。
Iさんは悲しみに暮れる中で、銀行や保険会社などの手続きを始めようとしましたが、
そこで初めて「前妻の子にも相続権がある」という現実を突きつけられます。
銀行担当者に言われた言葉は衝撃的でした。
「ご主人の法定相続人は、奥さまと、前妻とのお子さんお二人になります。」
Iさんは「もう何十年も会っていない子どもたちに、なぜ?」と戸惑い、
一方でGさん・Hさんは「父の財産を後妻に全部持っていかれるのでは」と不安を募らせます。
こうして、F家の“静かな争族”が始まりました。
Iさんにとって、夫Fさんの遺産は「これからの生活を守るための資産」。
一方、Gさん・Hさんにとっては、「父の愛情の証」でもあります。
どちらも悪意がないのに、立場の違いがすれ違いを生みます。
さらにややこしいのは、後妻Iさんの連れ子Jさん。
一緒に暮らしてきた家族なのに、法律上は相続人ではない——。
Jさんも複雑な気持ちを抱えながら、静かに見守るしかありませんでした。
相続の場面では、「家族の感情」と「法のルール」が交差します。
特に再婚家庭では、「誰が相続人になるのか」「どこまで権利があるのか」を、
生前にきちんと整理しておくことが大切です。
次回(第6話②・中編)では、
遺産分割協議の中で起きた“対立”と、“法律上の相続関係”を具体的に解説します。
・再婚家庭・複雑な家族関係における相続権の整理
・遺言書による「家族間の調整」サポート
・相続人関係説明図・戸籍調査の代行
・公平な遺産分割のための事前アドバイス
・司法書士・税理士との連携による総合支援