「元気なうちに財産を子どもに渡しておきたい」——
そんな善意から始まる生前贈与。ところが、その“思いやり”がきっかけで、
かえって家族の関係が壊れてしまうことがあります。
「あげたつもり」「もらってない」という認識のズレ。
口約束のままでは、贈与が成立したとは限りません。
今回は、“気持ちで贈ったつもり”が“争いの火種”になったケースを見ていきます。
主人公は、長男Cさん、長女Dさん、そして父Eさん。
Eさんは会社を早期退職し、退職金でマイホームを建て、教育費も惜しみなく負担してきました。
老後は年金と貯蓄で穏やかに暮らしていましたが、70歳を過ぎた頃、
体調を崩したのを機に「家族のためにできることをしておきたい」と考えるようになります。
ある日、Eさんは長男Cさんに言いました。
「お前には一番頼りにしてきたから、この土地を生前に渡しておくよ。」
しかし書類も登記もなく、ただの口頭での約束。
その後Cさんは、その土地に自宅を建てて暮らし始めました。
数年後、Eさんが亡くなり、相続が始まります。
遺産分割協議の場で長女Dさんが言いました。
「兄が住んでいる土地はお父さんの名義のまま。勝手に使っているのはおかしい。」
一方でCさんは反論します。
「父さんが生前に“譲る”と言った。だからこれは贈与だ。」
しかし登記名義はEさんのまま。
贈与契約書もなく、税務申告もしていませんでした。
法的には贈与の成立を裏付ける証拠がない状態です。
結果としてその土地は遺産の一部とみなされ、
兄妹の関係は急速に冷え込んでいきました。
このように、
民法上、贈与は「贈与者の意思表示と受贈者の承諾」で成立しますが、
証拠がなければ立証が困難です。
さらに、生前贈与が“特別受益”として扱われることもあり、
「兄ばかり得をした」という感情を招きやすいのです。
・生前贈与契約書、金銭贈与契約書、不動産贈与契約書の作成支援
・贈与登記・税務申告に関する司法書士・税理士との連携サポート
・特別受益の有無や相続分への影響に関する事前整理
・贈与ではなく「遺言」「死因贈与」など最適な選択肢の提案
・家族間の誤解を防ぐための説明資料・同意書の作成
「贈与」は“あげたつもり”ではなく、“証拠を残すこと”で初めて守られます。
思いやりを「法的な形」に変えておくことが、家族を守る最大の備えです。
次回(第5話②・中編)では、実際にCさんとDさんの対立がどのように深まり、
どんな法的判断が下されたのかを解説します。