相続では、長年連絡を取っていなかった親族が、相続開始後に法定相続分を主張してくることがあります。
たとえば、親の介護や生活支援を長く担ってきた兄姉からすると、これまで何も関わってこなかった弟や妹が突然現れ、当然のように取り分を求めてくることに、強い不満を感じることがあります。
「今まで何もしてこなかったのに、同じだけもらうのか」
これは、相続の現場でよく出てくる感情です。
今回は前編として、疎遠だった相続人が法定相続分を主張してきたとき、なぜ感情と法律がぶつかりやすいのか、その基本的な構図を整理します。
まず押さえておきたいのは、親族関係が疎遠だったという事実だけで、相続権がなくなるわけではないという点です。
たとえば、何年も連絡を取っていない弟がいたとしても、法律上の相続人である以上、原則として法定相続分を主張する立場にあります。
兄や姉から見ると、
「親の面倒は自分が見た」
「弟は何も協力しなかった」
という思いがあっても、そのことだけで直ちに弟の取り分がゼロになるわけではありません。
実際の相続では、法律上の結論と感情的な納得感が一致しないことが少なくありません。
特に、被相続人と同居して介護していた相続人や、通院の付き添い、生活費の補填を続けていた相続人からすると、長年疎遠だった親族が同じ相続権を持つことに、強い違和感を抱きやすくなります。
相続の話し合いがこじれるのは、財産の額だけが原因ではありません。
「誰がどれだけ関わってきたか」
という積み重ねがあるため、法定相続分の説明だけでは気持ちが収まりにくいのです。
もっとも、法律は家族の感情をそのまま基準にはしていません。
法定相続分は、原則として相続人の立場に応じて決まり、疎遠だったことや、連絡が少なかったことだけで自動的に修正される仕組みではありません。
そのため、介護を担っていた側は
「これでは不公平だ」
と感じますし、疎遠だった側は
「法律上の権利を言っているだけだ」
と考えることがあります。
このズレが、そのまま対立になります。
こうした相続で大切なのは、感情の問題と法的な問題を分けて整理することです。
「納得できない」という気持ちは自然ですが、その感情だけで相手の法的権利を否定できるわけではありません。
まず
「法律上どうなるのか」
を確認し、そのうえで、どこに不公平感があるのかを整理することが重要です。
・疎遠だった相続人でも、原則として相続権はなくならない
・介護や生活支援を担った側は不公平感を抱きやすい
・法定相続分は、関わりの濃さだけでは直ちに変わらない
・感情の問題と法的な問題を分けて整理することが大切
疎遠だった弟や妹から相続分を請求される場面では、「納得できない」という感情が先に立ちやすくなります。ですが、相続ではその感情をどう法的に整理できるかが重要です。
次回の中編では、こうした場面でどのような事情が法的に考慮され得るのかを整理します。
・戸籍収集など相続手続きの初動支援
・相続人調査、相続関係説明図の作成
・遺産分割協議書作成支援
・感情的対立がある相続案件の整理支援
・必要に応じた弁護士、税理士等との連携