前編では、訴訟中の債権や権利関係が争われている不動産など、係争中の財産も原則として相続の対象になり得ること、もっとも、その内容や価値が未確定なため、通常の財産より遺産分割が難しくなることを見てきました。
では、実際にこうした財産がある場合、相続人の間ではどのような分け方や進め方が考えられるのでしょうか。
中編では、係争中の財産を前にしたときの整理の仕方を見ていきます。
係争中の財産があると、すべての遺産分割が止まると思われがちです。
ですが、実務では、必ずしもすべてを一度に決めなければならないわけではありません。
たとえば、預貯金や明らかな不動産など、内容や評価が固まっている財産について先に協議し、訴訟中の財産は別枠で扱うという考え方があります。
このように整理すれば、一つの訴訟のために相続全体が何年も動かない、という事態を避けやすくなります。
相続では、財産ごとに処理のタイミングを分ける発想が重要になることがあります。
係争中の財産については、相続人の一人がその権利や立場を引き受ける形で整理することもあります。
たとえば、被相続人がしていた貸金返還請求訴訟を、相続人の一人が承継し、その代わりに他の財産の配分で調整するような場面です。
もっとも、この方法は簡単ではありません。
なぜなら、その財産の最終的な価値が読めない以上、他の相続人としては
「本当に公平なのか」
という不安を持ちやすいからです。
そのため、見込み額、訴訟の進行状況、勝敗の可能性などを踏まえ、慎重に話し合う必要があります。
一方で、無理に今分けようとせず、係争中の財産については判決や和解の結果を待つ方がよい場合もあります。
特に、その財産の価値が相続全体の中で大きいときや、訴訟結果によって権利の有無そのものが大きく変わるときは、現時点での分割がかえって不公平になることがあります。
この場合でも、他の財産まで全部止めるのか、それとも確定している部分だけ先に進めるのかは、分けて考えることが大切です。
つまり、係争中の財産がある相続では、
「今決める部分」と
「後で決める部分」
をどう切り分けるかが大きなポイントになります。
・係争中の財産があっても、他の財産を先に分ける考え方はあり得る
・相続人の一人が係争中の権利を引き受ける整理も考えられる
・ただし、価値が未確定なため公平性の検討が必要
・場合によっては判決や和解を待つ方が合理的なこともある
係争中の財産がある相続では、「全部待つ」か「全部今決める」かの二択ではありません。
実務では、財産の性質や訴訟の状況に応じて、先に決める部分と後で決める部分を整理することが重要です。
次回の後編では、こうした相続で実際に揉めやすいポイントと、トラブルを防ぐための注意点を整理します。
・戸籍収集など相続手続きの初動支援
・相続人調査、相続関係説明図の作成
・遺産分割協議書作成支援
・係争中の財産を含む相続関係全体の整理
・必要に応じた弁護士、司法書士等との連携