相続手続きでは、戸籍をたどって相続人を確定するのが基本です。
出生から死亡までの戸籍を集め、誰が法定相続人なのかを確認していきます。
しかし、この「戸籍をたどれば分かる」という前提が、そのまま通用しない場面があります。
代表例の一つが、相続人の中に帰化した方がいるケースです。
今回は前編として、帰化した相続人がいる場合に、なぜ戸籍の確認が難しくなるのか、相続実務で最初にぶつかりやすい壁を整理します。
例えば、父が亡くなり、相続人は妻、長男、長女の3人と思われていたケースです。
ところが、戸籍を集める中で、長女がもともと外国籍で、その後に日本国籍を取得していたことが分かったとします。
この場合、現在の日本の戸籍には、帰化後の身分関係は記載されます。
しかし、外国籍だった時代の家族関係や身分事項まで、日本の戸籍で連続的に確認できるわけではありません。
そのため、戸籍を追っていっても、ある時点から日本の記録が始まるだけで、それ以前の情報が見えないことがあります。
通常の相続の感覚で戸籍を集めても、途中で確認が止まってしまうのです。
相続では、「誰が相続人か」を証明できなければ、預貯金の解約や不動産の名義変更などを進めることができません。
そこで帰化した相続人がいると、手続先から
「その方の身分関係はどの資料で確認できますか」
「帰化前の氏名や親族関係は分かりますか」
と確認を求められることがあります。
つまり、今の戸籍があるだけでは足りず、その人が誰で、被相続人とどういう関係にあるのかを、補足資料も含めて示す必要が出てくるのです。
帰化後の戸籍が取れると、つい「これで足りる」と思いがちです。
ですが、実務では、帰化前の情報とのつながりをどう補うかが重要になります。
たとえば、氏名が変わっている、母国の証明書類が必要になる、翻訳文の添付を求められる、といったことがあります。
さらに、金融機関や法務局など、手続先によって確認の仕方が異なることもあります。
そのため、帰化が関係する相続では、通常の相続以上に、早い段階で必要資料を見極め、どう整理するかを考えておくことが大切です。
・相続では戸籍をたどって相続人を確定するのが基本
・ただし、帰化した相続人がいると戸籍だけでは連続的に確認できないことがある
・その結果、補足資料や説明が必要になることがある
・早い段階で資料収集と整理の見通しを立てることが重要
帰化した相続人がいるケースでは、戸籍実務の感覚だけで進めると、思わぬところで手続きが止まりやすくなります。
次回の中編では、どのような資料が問題になりやすいのか、実務上の対応ポイントを整理します。
・戸籍収集など相続手続きの初動支援
・相続人調査、相続関係説明図の作成
・帰化を含む複雑な身分関係の整理
・金融機関や法務局提出を見据えた資料整理支援
・必要に応じた司法書士、弁護士等との連携