【相続コラム374:相続手続きの現場編(第30話①)】預金口座が一つだけでも、相続手続きに時間がかかる理由(前編)
相続のご相談では、
「預金口座は一つだけです」
「残高もそれほど多くありません」
「銀行の手続きだけなので、すぐ終わりますよね」
とお聞きすることがあります。
たしかに、相続財産が預金口座一つだけであれば、手続きも簡単に見えるかもしれません。
しかし、相続手続きの現場では、預金口座が一つだけでも、思った以上に時間がかかることがあります。
前編では、まずその基本的な理由を整理します。
■口座の数と手続きの重さは別問題
預金口座が一つだけであっても、その口座が亡くなった方名義である以上、金融機関では相続手続きとして扱われます。
そのため、単に通帳やキャッシュカードがあるだけでは、すぐに解約や払戻しができるわけではありません。
金融機関は、誰が亡くなったのか、誰が相続人なのか、誰が手続きに同意しているのかを確認します。
残高が多いか少ないか、口座が一つか複数かということだけで、確認が省略されるとは限りません。
つまり、口座の数が少ないことと、相続手続きが簡単に終わることは別問題です。
■まず相続人の確認が必要になる
預金口座の相続手続きでは、亡くなった方の戸籍や、相続人を確認するための戸籍が必要になることがあります。
配偶者や子が相続人であれば比較的分かりやすい場合もありますが、子がいない相続、兄弟姉妹相続、代襲相続がある場合には、戸籍収集の範囲が広がります。
ご家族としては、「銀行口座は一つだけなのに、なぜここまで戸籍が必要なのか」と感じることもあります。
しかし、金融機関としては、預金を誰に払い戻してよいのかを確認する必要があります。
この相続人確認に時間がかかることが、預金口座一つだけでも手続きが長引く大きな理由です。
■相続人全員の協力が必要になることもある
預金の解約や払戻しでは、相続人全員の同意や署名押印、印鑑証明書が必要になる場合があります。
相続人が近くに住んでいて、連絡も取りやすければ進めやすいかもしれません。
一方で、相続人が遠方に住んでいる場合や、長年連絡を取っていない場合には、書類のやり取りや説明に時間がかかります。
また、金融機関ごとに必要書類や専用の相続届の様式が異なることもあります。口座が一つでも、その金融機関のルールに沿って準備する必要があります。
口座が一つだけでも、協力をお願いする相続人が多ければ、手続きの負担は大きくなります。
預金の金額や口座数ではなく、相続人の人数や関係性によって、手続きの進み方は大きく変わるのです。
■前編まとめ
預金口座が一つだけであっても、相続手続きがすぐに終わるとは限りません。
金融機関では、亡くなった方の確認、相続人の確認、相続人全員の同意や必要書類の確認が行われます。
そのため、口座の数が少ないことと、手続きが軽いことは同じではありません。
次回の中編では、預金口座一つだけの相続でも、実務上どのような場面で手続きが止まりやすいのかをお伝えします。
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