前編では、亡くなった方の本籍地が分からなくても、住民票関係の書類や手元の資料から手掛かりを探すことができるとお伝えしました。
中編では、相続の現場で意外と多い「家族の記憶と実際の本籍地が違う場面」について整理します。
ご家族から、
「父は50年以上、小樽に住んでいました」
「だから本籍も小樽だと思います」
とお話を伺うことがあります。
しかし、実際に確認すると、本籍地は札幌市や道外の市町村だったということがあります。
本籍地は、引っ越しをしたからといって自動的に変わるものではありません。
住所を何度変更していても、本籍地だけは結婚当時の場所や実家の所在地に残したままという場合があります。
日常生活で本籍地を意識する場面は多くありません。そのため、家族が正確な本籍地を知らないこともあります。
長く暮らした場所と本籍地が一致しないことは、決して珍しくないのです。
ここで注意したいのは、ご家族の記憶を最初から否定しないことです。
「昔、札幌に本籍があった気がする」
「祖父の家が函館だった」
「結婚した頃は東京にいた」
こうしたお話は、正確な本籍地そのものではなくても、調査の手掛かりになることがあります。
実務では、記憶と公的書類の情報を分けて整理します。
例えば、「いつ頃の話か」「誰と暮らしていた時期か」「結婚の前か後か」と確認すると、戸籍の動きを考える手掛かりが見えてくることがあります。
家族の記憶だけで戸籍を請求するのは危険ですが、次の確認先につながる情報が含まれていることもあります。
つまり、「記憶を信じるか、信じないか」という話ではありません。
記憶を手掛かりとして使い、公的な記録で確認することが大切なのです。
「本籍は小樽市だったと思います」
ここまで分かっていても、具体的な本籍の表示まで分からない場合があります。
昔の運転免許証では本籍が記載されていた時期もありましたが、現在は本籍地を意識する機会が少なくなっています。
そのため、市町村名は覚えていても、番地までは分からないというケースがあります。
「小樽市まで分かっているのだから十分では」と感じるかもしれません。しかし、曖昧な記憶のまま進めるより、確認できる情報を整理した方が確実です。
こうした場合にも、確認できる書類から本籍地を特定していく必要があります。
「だいたい分かる」と「戸籍を請求できる情報がそろっている」は別問題なのです。
相続の現場では、ご家族が覚えている住所と、実際の本籍地が違うことがあります。
だからといって、ご家族の記憶が役に立たないわけではありません。
記憶は手掛かりとして整理し、最終的には公的な記録で本籍地を確認する。
この順番が大切です。
次回の後編では、本籍地を確認した後、そこからどのように戸籍収集を進めていくのかを整理します。
・戸籍収集など相続手続きの初動支援
・本籍地確認に向けた情報、資料の整理
・出生から死亡までの戸籍の確認、収集
・相続人調査、相続関係説明図の作成
・遺産分割協議書作成支援
・必要に応じた司法書士、税理士、弁護士等との連携