相続手続きでは、まず「戸籍を集める」作業が必要になります。
一見すると、役所に請求して必要な戸籍を順番に取っていくだけの作業に見えるかもしれません。
しかし実務では、この「どの戸籍から集め始めるか」によって、手続きの進み方が大きく変わることがあります。
今回は前編として、戸籍収集の基本的な考え方と、なぜ順番が重要なのかを整理します。
相続手続きでは、原則として亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を確認していきます。
そこで基本となるのが、まず亡くなった方の最後の本籍地から、死亡の記載がある戸籍を取得することです。
現在の戸籍を確認すると、
・その前の戸籍はどこにあったのか
・いつ転籍したのか
・戸籍が改製されているか
といった情報を読み取ることができます。
つまり、現在の戸籍は「一つ前の戸籍を探すための手掛かり」でもあるのです。
この確認をせずに戸籍収集を始めると、請求先そのものを誤るだけでなく、同じ役所へ何度も問い合わせることにもなりかねません。
実務では、取得した戸籍を一通ずつ確認し、その記載から次に請求すべき役所を判断していきます。最初から全ての請求先が分かっているとは限らないのです。
ご家族から、
「父は○○市で生まれたので、まず○○市に戸籍を請求すればよいですよね」
と聞かれることがあります。
しかし、出生地と本籍地は必ずしも同じではありません。
また、結婚、転籍、戸籍制度の改製などにより、本籍地が何度も変わっていることもあります。
記憶だけを頼りに複数の役所へ請求すると、「該当する戸籍がありません」という回答を受け、結果として遠回りになる場合があります。
戸籍の請求には、申請書の作成、本人確認書類の準備、定額小為替や返信用封筒の準備などが必要になる場合もあります。
請求先を間違えるたびに、時間だけでなく手間も積み重なっていくのです。
さらに、一度に複数の自治体へ見込みで請求した結果、後から「そもそもこの役所への請求は不要だった」と分かることもあります。
実務では、手元にある戸籍の記載を確認しながら、一つ前、そのまた一つ前へと遡っていくのが基本です。
戸籍収集は、必要な書類を闇雲に集める作業ではありません。
現在の戸籍に書かれた情報を手掛かりに、過去の戸籍へ遡っていく。
いわば、戸籍の中に残された「地図」をたどる作業です。
順番を整理せずに請求を始めると、不要な照会や再請求が増え、相続手続き全体が遅れることもあります。
戸籍収集では、「どこの役所に請求するか」だけではなく、「どの順番で確認するか」が重要です。
まず最後の戸籍を確認し、記載内容を手掛かりに過去へ遡る。
この基本を押さえるだけでも、戸籍収集の遠回りを減らすことができます。
次回の中編では、実際の戸籍収集でよく起こる「途中で戸籍がつながらない」という場面について整理します。
・戸籍収集など相続手続きの初動支援
・出生から死亡までの戸籍の確認、収集
・相続人調査、相続関係説明図の作成
・戸籍の記載内容を踏まえた収集順序の整理
・遺産分割協議書作成支援
・必要に応じた司法書士、税理士、弁護士等との連携