相続のご相談では、
「家族の中ではもう話がまとまっています」
と伺うことがあります。
相続人同士で大きな対立もなく、誰が何を相続するかについてもおおむね納得している。
そのため、ご家族としては
「それならあとは手続きだけだろう」
と感じやすいところです。
しかし実務では、家族が納得しているのに、そこから先の手続きが思うように進まないことが少なくありません。
一見すると不思議に思えますが、相続手続きは、単に気持ちがまとまれば終わるものではありません。
実際には、遺産分割協議書への署名押印、印鑑証明書の取得、金融機関や法務局への提出、必要書類の整合確認など、**「納得の後に必要になる実務上の段階」**があります。
しかもこの段階では、内容面の争いよりも、書類をそろえる手間、日程調整、返送の遅れ、説明不足といった、地味だが重い実務上の負担が表れやすくなります。
つまり、相続では
「家族が納得していること」
と
「実際に手続きが進むこと」
は、同じではないのです。
今回は前編として、なぜ家族が納得しているのに相続手続きが止まることがあるのか、その基本的な構図を整理します。
相続人が分け方に異論を持っていなくても、そこから先には実際の行動が必要です。
署名する、実印を押す、印鑑証明書を取る、書類を返送する。
こうした一つ一つの行動がそろって初めて、手続きは前に進みます。
そのため、気持ちの上での合意があっても、実務の動きが伴わなければ、手続きは止まります。
実務では、相続人が反対していないのに、動き出しが遅いことがあります。
忙しい、書類の意味を十分理解できていない、役所に行く時間が取れない、返送を後回しにしてしまう。
こうした事情は珍しくありません。
つまり、相続で止まるのは争いがあるときだけではなく、誰も反対していないのに、具体的な行動がそろわないときでもあるのです。
金融機関や法務局は、家族の中で話がついているかどうかだけでは動けません。
必要書類が整っているか、相続人全員の意思が形として確認できるかを見ています。
そのため、家族の感覚では
「もう決まっている話」
であっても、提出先から見れば
「まだ確認資料が不足している状態」
ということがあります。
・家族の納得と、実際に手続きが進むことは別である
・納得の後には、署名押印や証明書取得など具体的な行動が必要になる
・反対していなくても、すぐに動けるとは限らない
・手続き先は、合意だけでなく必要書類の整い方を重視する
相続手続きでは、家族が納得していること自体は大切な土台です。
ただし、実務ではその土台の上に、書類、証明、返送、提出という次の段階があります。
次回の中編では、家族が納得しているのに実際には止まりやすい典型的な場面を整理していきます。
・戸籍収集など相続手続きの初動支援
・相続人調査、相続関係説明図の作成
・遺産分割協議書作成支援
・署名押印、印鑑証明書取得を見据えた段取り整理支援
・必要に応じた司法書士、税理士等との連携