相続手続きでは、遺産分割協議書への署名押印とあわせて、相続人に印鑑証明書の提出をお願いする場面がよくあります。
実際、手続きの説明をすると、
「印鑑証明書を1通出してもらえばよいのですね」
という反応になることも少なくありません。
しかし現場では、この印鑑証明書をお願いするだけのはずの作業が、思った以上に時間を要することがあります。
相続人の側から見れば簡単に見えても、実際には、依頼の伝え方、相手の理解、取得の手間、返送の流れなど、いくつもの段階を経るからです。
今回は前編として、印鑑証明書のお願いが、なぜ相続手続きの中で意外と止まりやすいのか、その基本的な構図を整理します。
依頼する側としては、印鑑証明書は
「役所やコンビニで取れる書類」
という感覚になりがちです。
ですが、相続人によっては、印鑑登録自体をしていない、普段ほとんど取得したことがない、マイナンバーカードを使っていない、平日に役所へ行きにくい、といった事情があります。
つまり、こちらにとっては「1通お願いするだけ」でも、相手にとっては
「何をどう準備して、どこで取ればいいのか」
から始まることがあるのです。
相続手続きでは、多くの場合、相続人全員分の書類がそろって初めて次に進めます。
そのため、数人のうち1人だけでも印鑑証明書の取得や返送が遅れると、全体がそこで止まりやすくなります。
特に、遠方在住者、高齢者、仕事が忙しい人、普段連絡が密でない親族がいる場合は、書類のお願いそのものに時間がかかることがあります。
相続で厄介なのは、難しい争いだけではありません。
誰か1人の小さな遅れが、全体の停滞につながること
も少なくないのです。
印鑑証明書の取得が遅れやすい理由の一つに、相手がその必要性を十分に理解していないことがあります。
依頼する側は
「相続手続きに必要だから」
と思っていますが、相手には
「なぜ必要なのか」
「急ぐ理由はあるのか」
が伝わっていないことがあります。
その結果、後回しにされたり、
「実印を押せば足りるのでは」
「後でまとめて出せばよいのでは」
と考えられたりして、動きが鈍くなることがあります。
・印鑑証明書の取得は、相手にとって簡単とは限らない
・相続人が複数いると、1人の遅れで全体が止まりやすい
・書類の意味や必要性が伝わっていないと動きが遅くなる
・「お願いするだけ」の作業でも実務では停滞要因になり得る
印鑑証明書は、相続手続きの中では基本的な書類の一つです。
ですが、だからこそ軽く見られやすく、現場では意外と時間を取られることがあります。
次回の中編では、実際にどのような場面で印鑑証明書の取得や返送が止まりやすいのか、典型例を整理していきます。
・戸籍収集など相続手続きの初動支援
・相続人への必要書類案内の整理支援
・遺産分割協議書作成支援
・印鑑証明書や署名押印の取得段取り支援
・必要に応じた弁護士、司法書士等との連携