前編では、戸籍を集めて相続人の範囲が分かっても、その相続人に実際に連絡できるとは限らず、住所確認が相続手続き全体の土台になることを整理しました。
では、実際にはどのような場面で、相続人の住所確認が難しくなるのでしょうか。
中編では、現場で特に多い典型例を整理します。
相続手続きで住所確認が難しくなりやすい典型例の一つが、前婚の子が相続人に入るケースです。
戸籍をたどることで相続人であること自体は分かっても、現在どこに住んでいるのか、どのように連絡を取ればよいのかまでは、すぐには分からないことがあります。
現配偶者や同居家族にとっては、存在は知っていても接点がほとんどなく、相続開始後に初めて「正式に連絡を取らなければならない相手」として現実味を帯びることになります。
被相続人に子も直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が相続人になることがあります。
この場面では、兄弟姉妹本人だけでなく、既に亡くなっている人がいればその子が代襲相続人となるため、普段ほとんど付き合いのない甥姪まで関係者に入ってくることがあります。
このようなケースでは、名前は戸籍で確認できても、住所や連絡先が分からず、誰からどうたどればよいのかで止まりやすくなります。
相続人の人数が増えるほど、住所確認は単純な事務では済まなくなります。
相続手続きで誤解されやすいのは、戸籍を取れば住所も分かるという感覚です。
しかし、戸籍は身分関係を示すものであって、現在の住所そのものが常に分かるわけではありません。
そのため、相続人の現住所確認のために戸籍の附票が必要になることがあります。
また、附票をたどっても転居が重なっていたり、既に除票になっていたりすると、そこでさらに確認作業が必要になる場合もあります。
つまり、相続人が戸籍で確認できても、住所確認は別の作業として考える必要があるのです。
住所が分からない相続人について、
「とりあえず他の相続人だけで進めよう」
と考えたくなることもあります。
しかし、相続手続きでは、相続人全員が関わるべき場面が多くあります。
そのため、住所確認を後回しにすると、遺産分割協議書の作成や押印取得の段階で一気に止まりやすくなります。
早い段階では小さな問題に見えても、後になればなるほど重くなる。
これが住所確認の難しさです。
・前婚の子がいる場合は最初から連絡先が分からないことがある
・兄弟姉妹相続では甥姪まで関係者が広がりやすい
・戸籍と現在の住所確認は別の作業である
・住所確認を後回しにすると、後の協議や押印取得で大きく止まりやすい
相続人の住所確認が難しいのは、特殊な争いがあるからではなく、相続人の範囲が広がったり、長年疎遠だったりすることで、連絡の入口そのものが作りにくくなるからです。
次回の後編では、こうした住所確認の停滞を防ぐために、実務でどのような順序で整理していくべきかを見ていきます。
・戸籍収集など相続手続きの初動支援
・相続人調査、現住所確認の整理支援
・相続関係説明図の作成
・遺産分割協議書作成支援
・必要に応じた弁護士、司法書士等との連携