相続手続きでは、戸籍を集めて相続人の範囲が分かれば、次に進めると思われがちです。
しかし現場では、その段階で早くも止まることがあります。
典型的なのが、相続人の住所が分からないという場面です。
たとえば、兄弟姉妹の一人と長年連絡を取っていない、前婚の子の現在の居所が分からない、相続人の名前は戸籍で確認できても、今どこに住んでいるのかが分からない、といったケースです。
相続人からすると、
「相続人が誰か分かれば足りるのではないか」
と思いやすいのですが、実際には、手続きを進めるにはその相続人に連絡を取り、意思確認をし、必要書類をやり取りしなければならないことが少なくありません。
今回は前編として、なぜ相続人の住所確認が現場で最初の壁になりやすいのか、その基本的な構図を整理します。
戸籍を集めると、法律上の相続人が誰なのかは見えてきます。
ですが、戸籍で分かるのは基本的に身分関係であって、現在の住所や連絡先まで当然に分かるとは限りません。
つまり、
相続人の存在が確認できたこと
と
その人に実際に連絡できること
は別の問題です。
相続手続きは、相続人の範囲を確定しただけでは進まず、その後の連絡・協議・押印取得まで含めて初めて動きます。
このため、住所が分からない相続人が一人いるだけで、全体が止まりやすくなります。
特に多いのは、長年連絡を取っていなかった親族が相続人に入ってくるケースです。
普段の生活では意識していなかった相手でも、相続になると正式な当事者になります。
すると、
「今どこに住んでいるのか」
「手紙を送れるのか」
「協議に応じてもらえるのか」
という現実的な問題が一気に前に出てきます。
相続で怖いのは、争いがあることだけではありません。
連絡の入り口が作れないこと
そのものが、手続停滞の原因になることがあります。
住所確認というと、単なる事務作業のように見えるかもしれません。
ですが実際には、その後の遺産分割協議、書類送付、署名押印、必要に応じた調停対応まで見据えると、非常に重要な最初の工程です。
住所が分からなければ、相続人に資料を送り、意思を確認し、協議を進めることができません。
つまり、住所確認は細かい作業ではなく、相続手続全体を動かすための土台なのです。
・戸籍で相続人が分かっても、連絡できるとは限らない
・相続人の住所が分からないと手続全体が止まりやすい
・疎遠な親族ほど、相続開始後に現実的な問題になりやすい
・住所確認は相続手続全体の土台になる重要な作業である
相続手続きが止まるのは、難しい争いがあるときだけではありません。
相続人の住所が分からないという、ごく初歩的に見える確認作業で、最初から進まなくなることもあります。
次回の中編では、現場で実際にどのような場面で住所確認が難しくなるのか、典型例を整理していきます。
・戸籍収集など相続手続きの初動支援
・相続人調査、現住所確認の整理支援
・相続関係説明図の作成
・遺産分割協議書作成支援
・必要に応じた弁護士、司法書士等との連携