前編では、法定相続情報一覧図は相続関係を示す資料として非常に便利である一方、それだけで遺産分割や名義変更、預貯金解約まで完結するわけではなく、その先の手続には別の確認や書類が必要になることを整理しました。
では、実際にはどのような場面で、法定相続情報一覧図があっても手続きが止まりやすいのでしょうか。中編では、現場で特に多い典型例を整理します。
法定相続情報一覧図があると、銀行に戸籍束を何度も持ち込まなくて済みやすくなります。
ただし、銀行が見たいのは相続人の範囲だけではありません。
実際の払戻しでは、
「誰がその預貯金を受け取るのか」
「相続人全員の意思はどう整っているのか」
を確認する必要があります。
そのため、一覧図を出しても、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書、本人確認資料などが不足していれば、そこで手続きは止まります。
一覧図は相続関係の説明には有効ですが、払戻しの根拠そのものを代替するわけではありません。
不動産の相続登記でも、法定相続情報一覧図は有効に使えます。
しかし、登記の現場では、一覧図だけで名義変更が完了するわけではありません。
たとえば、遺産分割によって特定の相続人が不動産を取得するのであれば、その内容が分かる遺産分割協議書が必要になります。
また、不動産の表示が正確か、住所のつながりに追加資料が要るかなど、別の整理が必要になることもあります。
つまり、一覧図は
「誰が相続人か」
を示すには有効でも、
「なぜこの人に登記するのか」
まで単独で証明するものではありません。
実務で戸惑いやすいのは、法定相続情報一覧図の評価や使い方が、提出先ごとに少しずつ違うことです。
ある金融機関では一覧図で戸籍提出をかなり省略できても、別の金融機関では補足資料をより細かく求められることがあります。
また、相続手続の種類によっても、一覧図だけで足りる部分と、そうでない部分があります。
そのため、
「一覧図を作ったから、どこでも同じように進む」
と考えると、実務ではズレが生じやすくなります。
一覧図は便利ですが、提出先ごとの要求に合わせた調整が必要です。
・銀行では一覧図があっても遺産分割や本人確認の資料で止まることがある
・不動産では一覧図だけで登記原因まで証明できるわけではない
・提出先ごとに一覧図の使い方や追加資料の要求が異なることがある
・一覧図があっても、その先の手続整理は別途必要である
法定相続情報一覧図は、相続手続の入口を整えるうえで非常に有効です。
ですが、実際の現場では、その先にある遺産分割や各手続先ごとの確認をどう進めるかが重要になります。
次回の後編では、法定相続情報一覧図を作った後に手続きを止めにくくするため、どのような順序で整理していくべきかを見ていきます。
・戸籍収集、法定相続情報一覧図作成の初動支援
・相続人調査、相続関係説明図の作成
・遺産分割協議書作成支援
・金融機関や各提出先を見据えた書類整理支援
・必要に応じた司法書士、税理士等との連携