相続手続きのご相談で、
「法定相続情報一覧図を作れば、あとは一気に進みますよね」
と聞かれることがあります。
たしかに、法定相続情報一覧図は便利な制度です。
戸籍一式の代わりとして相続関係を証明しやすくなり、金融機関や各種手続で戸籍束を何度も出し直す負担を減らすことができます。
しかし実務では、法定相続情報一覧図を作ったからといって、相続手続き全体がそのまま終わるわけではありません。
一覧図はあくまで“入口を整える資料”であり、その先には別の確認や書類が必要になることが少なくありません。
今回は前編として、法定相続情報一覧図を作っても、なぜ相続手続きがそこで完結しないのか、その基本的な構図を整理します。
法定相続情報一覧図の役割は、被相続人と相続人の関係を一覧で示し、戸籍の束に代えて相続関係を証明しやすくすることにあります。
つまり、
「誰が相続人なのか」
を示す資料としては有効です。
ですが、相続手続きではそれだけで足りるとは限りません。
たとえば、誰がどの財産を取得するのか、預貯金をどう分けるのか、不動産を誰の名義にするのかといった点は、一覧図だけでは決まりません。
一覧図は相続の土台を示す資料であって、遺産分割そのものを確定する資料ではないのです。
実務でよくあるのが、一覧図を作ったことで
「これで銀行手続きも全部進むだろう」
と思っていたのに、追加書類を求められるケースです。
金融機関や手続先が見たいのは、相続人の範囲だけではありません。
相続人全員の意思がどう整っているのか、遺産分割協議はどうなっているのか、本人確認資料はそろっているのか、といった点も確認します。
そのため、一覧図があっても、遺産分割協議書、印鑑証明書、本人確認書類などが必要になることがあります。
相続関係が分かることと、実際の払戻しや名義変更が進むことは別問題です。
法定相続情報一覧図の大きな利点は、戸籍一式を何度も提出しなくて済みやすくなることです。
これは実務上かなり大きなメリットです。
ただし、ここで誤解しやすいのは、戸籍提出の負担が軽くなることと、手続き全体が簡単になることは同じではない、という点です。
相続では、戸籍の確認が済んでも、各財産ごとの整理、相続人間の合意、提出先ごとの書類調整が必要です。
一覧図は便利ですが、相続手続きそのものを省略してくれるわけではありません。
・法定相続情報一覧図は相続関係を示す資料として有効である
・ただし、遺産分割や名義変更の内容まで確定するものではない
・金融機関や提出先は一覧図の先にある書類も確認している
・戸籍提出の負担軽減と、手続全体の完了は別問題である
法定相続情報一覧図は、相続手続きの現場で非常に役立つ資料です。
ですが、それを作っただけで全てが終わるわけではなく、その先には各手続先ごとの確認や追加資料の整理が待っています。
次回の中編では、実際にどのような場面で「一覧図があるのに止まる」のか、現場で多い典型例を整理していきます。
・戸籍収集、法定相続情報一覧図作成の初動支援
・相続人調査、相続関係説明図の作成
・遺産分割協議書作成支援
・金融機関や各提出先を見据えた書類整理支援
・必要に応じた司法書士、税理士等との連携