相続手続きの中でも、銀行の預貯金解約は
「必要書類をそろえて出せば進む」
と思われがちです。
実際、戸籍や遺産分割協議書、印鑑証明書などを持参し、窓口で
「書類はそろっています」
と言われると、相続人としてはひとまず安心します。
ところが実務では、その一言で手続き完了が見えたように思えても、その後に確認や差戻しが入り、思ったより時間がかかることが少なくありません。
相続人からすると、
「揃っていると言われたのに、なぜまだ進まないのか」
「追加で確認が入るなら最初に言ってほしかった」
と感じやすい場面です。
今回は前編として、銀行の相続手続きで「書類は揃っています」と言われても、すぐに安心しきれないのはなぜか、その基本的な構図を整理します。
銀行窓口で言われる
「書類は揃っています」
という言葉は、あくまでその場で必要そうな資料が一通り提出されている、という意味であることが多いです。
しかし、銀行の相続手続きは、単に紙が提出されたかどうかだけで終わるわけではありません。
提出された戸籍のつながり、相続人の範囲、協議書の記載内容、印鑑証明書との整合、口座名義との一致など、内部で確認すべき点が多くあります。
そのため、窓口で受け付けてもらえたことと、実際に払戻しや解約が確定したことは同じではありません。
相続人の感覚では、必要書類を出した時点で
「これで終わり」
と思いやすいものです。
しかし銀行側は、書類が存在するかどうかだけでなく、その内容で相続関係や払戻しの根拠を確認できるかを見ています。
たとえば、戸籍が一応そろっていても、相続関係のつながりが読みにくいことがあります。
遺産分割協議書があっても、預金口座の特定が曖昧だったり、相続人の署名押印の形に不備があったりすると、そのままでは処理できないことがあります。
つまり、銀行手続きでは
「書類がある」
ことより、
「その書類で銀行が判断できる」
ことが重要なのです。
実務でよくあるのが、窓口では受理されたのに、後で本部や集中部署で追加確認が入るケースです。
窓口担当者は、まず必要書類の有無や外形を確認しますが、最終的な相続関係の審査や払戻し可否の判断は、別の部署で行われることがあります。
そのため、窓口で
「揃っています」
と言われても、その後の精査で補足説明や追加資料を求められることがあります。
このズレが、相続人にとっては
「話が変わった」
と感じられやすい理由の一つです。
・銀行で「書類は揃っています」と言われても、手続完了とは限らない
・「書類があること」と「その内容で判断できること」は別問題
・銀行は形式面だけでなく相続関係や協議内容の整合も確認している
・窓口受付後に本部審査で追加確認が入ることもある
銀行の相続手続きが思ったより進まないのは、書類不足というより、提出書類で本当に払戻しの根拠を確認できるかが見られているからです。
次回の中編では、実際にどのような点で銀行手続きが止まりやすいのか、現場で多い典型例を整理していきます。
・戸籍収集など相続手続きの初動支援
・相続人調査、相続関係説明図の作成
・遺産分割協議書作成支援
・銀行提出書類の事前整理と確認支援
・必要に応じた司法書士、税理士等との連携