前編では、相続開始後の財産は相続人全体に関わる財産であり、遺産分割前に一部を使ってしまうと、必要な支出だったとしても後から不信感につながりやすいことを整理しました。
中編では、葬儀費用、家の維持費、生活費、現金の引き出しなど、実務で特に問題になりやすい支出の典型例を見てきました。
では、こうした火種を大きくしないためには、遺産分割前の支出をどのように整理し、どう残しておくべきなのでしょうか。後編では、実務上の進め方を整理します。
遺産分割前に相続財産を使った場合、最もよくないのは、その事実を曖昧にしたままにすることです。
使った側としては
「必要な支出だったのだから、わざわざ言わなくてもよい」
と感じることがあります。ですが、後から通帳の動きや現金の不足が見つかると、それだけで他の相続人の不信感は強くなります。
そのため、大切なのは、使ったこと自体を隠さず、早めに共有することです。相続では、支出そのものより、隠されたと感じることの方が大きな火種になりやすいのです。
必要な支出であったことを後から説明するには、記録が欠かせません。
葬儀費用、病院代、固定資産税、公共料金などは、領収書や請求書を残し、いつ、何のために、いくら使ったのかを整理しておくことが重要です。現金で支払った場合でも、簡単なメモを残しておくだけで後の説明は大きく変わります。
相続では、
「本当に必要だった」
という気持ちだけでは足りません。
第三者が見ても流れを追える形にしておくことが大切です。
遺産分割前の支出は、その場で終わる問題ではなく、最終的には遺産分割全体の中でどう扱うかを整理する必要があります。
たとえば、必要経費として全体で確認するのか、立替金として精算するのか、一部は私的支出として差し引くのか、といった整理です。
ここを曖昧にしたまま進めると、協議書作成の段階で再び対立しやすくなります。
支出の問題は、感情論で終わらせず、遺産分割の中で位置づけることが重要です。
・遺産分割前の支出は隠さず早めに共有することが大切
・領収書やメモを残し、支出を見える化しておく必要がある
・必要経費か私的支出かを整理して説明できることが重要
・最終的には遺産分割全体の中でどう扱うかを決めるべきである
遺産分割前の支出は、現実には避けられない場面もあります。ですが、その後の説明や整理が不十分だと、必要な支出まで不信感の種になってしまいます。だからこそ、使った時点から記録を残し、後で遺産分割の中で整理できるようにしておくことが、相続をこじらせないための大切な視点になります。
・戸籍収集など相続手続きの初動支援
・相続人調査、相続関係説明図の作成
・遺産分割協議書作成支援
・相続開始後の預貯金や支出の整理支援
・必要に応じた弁護士、司法書士、税理士等との連携