前編では、遺産分割協議がまとまっていても、相続登記をしないまま放置すると、外からは権利関係が見えず、時間の経過とともに事情を知る人や証拠が失われ、後から問題が再燃しやすいことを整理しました。
では、実際にはどのような場面で、登記放置の問題が表面化しやすいのでしょうか。中編では、実務上よくある火種の出方を見ていきます。
相続登記をしていない不動産で、最も問題が表面化しやすいのは売却の場面です。
家族の中では
「この家は長男のもの」
という理解で何年も過ごしていても、登記簿上は被相続人名義のままであれば、そのままでは売却手続を進めることができません。
ここで初めて、戸籍の収集、遺産分割協議書の確認、関係者の押印、場合によっては追加の説明や資料整理が必要になります。円満に済んだと思っていた相続でも、売る段階になって急に“未処理案件”として姿を現すのです。
もう一つ典型的なのが、最初の相続後にさらに次の相続が起きる場面です。
たとえば、本来は母が取得するはずだった不動産を登記しないまま母も亡くなると、今度は母の相続人まで関係者に入ってきます。すると、もともと単純だったはずの不動産が、複数の家族の相続をまたぐ問題に変わります。
この状態になると、当初の相続でまとまっていたはずの話を、新しい関係者にも説明しなければならず、感情面も手続面も一気に重くなります。
登記をしなくても、不動産そのものはそこに残り続けます。
そのため、固定資産税の納付、建物の管理、近隣対応など、現実の負担だけが続くことがあります。
ところが、権利関係があいまいなままだと、
「誰が正式に責任を持つのか」
「誰が費用を負担すべきか」
が曖昧になりやすくなります。
つまり、登記をしないままでも当面困らないように見えて、実際には負担だけが積み重なり、後で不満の火種になりやすいのです。
「協議書があるから大丈夫」と考える方もいます。もちろん、協議書は重要です。ですが、年月が経つと、原本の所在が分からない、記載が不十分、印鑑証明書とのつながりが分かりにくい、といった問題が出ることがあります。
そのため、協議がまとまった時点で安心せず、登記まで終えておくことが、最も確実な整理になります。
・登記放置は売却時に一気に問題化しやすい
・二次相続が起きると関係者が増えて複雑になりやすい
・固定資産税や管理負担だけが残り、不満の火種になることがある
・協議書があっても、登記まで終えなければ安心しきれない
相続登記を怠ると、問題はその場では見えにくくても、売却、二次相続、管理負担といった現実の場面で必ず表に出やすくなります。
次回の後編では、こうした火種を再燃させないために、遺産分割後どのように動くべきか、実務上の進め方を整理します。
・戸籍収集など相続手続きの初動支援
・相続人調査、相続関係説明図の作成
・遺産分割協議書作成支援
・相続登記を見据えた不動産相続の整理支援
・必要に応じた司法書士、税理士等との連携