前編では、相続放棄をすると法律上は最初から相続人ではなかったものとみなされる一方で、現実に残っている不動産や家財の問題まで直ちに消えるわけではないことを整理しました。
では、実際には相続放棄後にどのような管理や対応が問題になりやすいのでしょうか。
中編では、実務上つまずきやすい場面を整理します。
相続放棄後に特に問題になりやすいのが、被相続人が住んでいた家や、その中に残された家財道具です。
たとえば、空き家のまま放置すれば、建物の傷みが進んだり、近隣に迷惑がかかったりするおそれがあります。郵便物がたまり、草木が伸び、冬場であれば落雪や凍結の問題が出ることもあります。
また、室内にある家具や生活用品も、相続放棄をしたからといって自然に消えるわけではありません。誰も手をつけないまま時間が経つと、管理の負担だけが残りやすくなります。
ここで注意したいのは、放棄した以上もう自分のものではないのだから、自由に処分してよいとは限らないことです。
たとえば、家財を勝手に処分したり、不動産を当然に自分の判断で売却や解体の方向に進めたりすると、後で別の相続関係人や利害関係人との関係で問題になるおそれがあります。
つまり、相続放棄後は
「関係ないから何もしない」
も、
「もう自分のものではないが自分の判断で処分する」
も、どちらも危うい場面があります。
この中途半端さが、相続放棄後の実務を分かりにくくしている大きな理由です。
相続放棄後に問題になるのは、あくまで当面の管理や引継ぎに関する部分です。
たとえば、雨漏りや倒壊の危険を放置しない、近隣に明らかな迷惑が及ばないよう最低限の対応をする、といった場面はあり得ます。しかし、それを超えて積極的に財産を動かすことは、慎重に考えなければなりません。
実務では、
「どこまでが最低限の管理なのか」
「どこからが処分行為に近いのか」
を見極めることが重要になります。
つまり、放棄後に何かをする必要があるとしても、それは何でも自由にしてよいという意味ではありません。
相続放棄後の問題が長引きやすいのは、次に誰が関わるのかが見えにくいからです。
自分は放棄した、でも他の相続人も動かない、連絡も取れない。この状態だと、現場だけが取り残されてしまいます。
そのため、相続放棄を考える段階から、
「放棄後に残る不動産や家財を誰がどう引き継ぐのか」
を意識しておくことが大切です。放棄の申述だけに目が向くと、その後の現実対応で行き詰まりやすくなります。
・相続放棄後は空き家や家財の扱いが問題になりやすい
・放棄したからといって自由に処分してよいとは限らない
・必要な管理と処分行為は分けて考える必要がある
・放棄後に誰が引き継ぐのかを早めに意識することが重要
相続放棄後に難しいのは、法律上は手を離れたはずなのに、現実には管理や引継ぎの問題が残ることです。
次回の後編では、こうした場面で無用なトラブルを防ぐために、どのような順序で対応を整理すべきかを見ていきます。
・戸籍収集など相続手続きの初動支援
・相続放棄を前提とした資料整理支援
・不動産や家財を含む相続関係全体の整理
・相続放棄後の実務的な対応整理
・必要に応じた弁護士、司法書士等との連携