相続放棄をすると、被相続人の財産も借金も引き継がない。
この点は広く知られるようになってきました。
そのため、負債の多い相続では、
「相続放棄さえすれば全部終わる」
と考える方も少なくありません。
しかし、実務では、相続放棄をした後でも、すぐに完全に手が切れるとは限らない場面があります。
特に、被相続人の自宅や家財、管理が必要な不動産などが残っている場合、
「もう相続人ではないはずなのに、なぜまだ関わる必要があるのか」
と戸惑うことがあります。
今回は前編として、相続放棄をしても「終わったはずが終わらない」と感じやすいのはなぜか、その基本的な構図を整理します。
相続放棄をすると、法律上は最初から相続人ではなかったものとみなされます。
そのため、被相続人の借金を返済する義務や、遺産分割に加わる立場は失います。
ただし、ここで見落とされやすいのが、法律上の地位と、現実にそこに残っている財産や物の問題は別だという点です。
たとえば、放棄した人が被相続人の家に住み続けている、鍵を管理している、家財がそのまま残っている、近隣に迷惑がかからないよう最低限の対応が必要、といった場面では、
「もう関係ない」と一言で切り離しにくいことがあります。
相続放棄をすると、すべての義務がその瞬間に消えるような印象を持たれがちです。
ですが、実務では、誰も管理しないまま放置すると、建物の損傷、近隣トラブル、家財の散乱、郵便物の放置など、別の問題が発生することがあります。
そのため、放棄した後でも、次に管理すべき人や機関に引き継がれるまでの間、一定の対応が必要になることがあります。
ここで大切なのは、
「相続したから義務がある」
という話ではなく、
「今その物を事実上動かせる立場にいる人が、完全に無関係とは言い切れないことがある」
という点です。
預貯金だけの相続であれば、相続放棄後に大きな問題が残りにくいこともあります。
しかし、空き家、土地、車、家財道具などが残っている場合は、話が別です。
たとえば、老朽化した空き家をそのままにすれば、近隣への危険が生じるかもしれません。
室内の動産も、すぐに誰かが引き取ってくれるとは限りません。
その結果、相続放棄をした人が
「終わったと思ったのに、まだ片づけや連絡の問題が残っている」
と感じやすくなります。
・相続放棄をすると法律上は相続人ではなくなる
・ただし、現実に残る不動産や家財の問題は別に残ることがある
・特に誰も管理しない状態だと新たなトラブルが生じやすい
・相続放棄後も、完全に無関係とは言い切れない場面がある
相続放棄は非常に重要な手続ですが、それだけで現実の問題がすべて消えるわけではありません。特に、不動産や家財が残る相続では、「放棄したのに終わらない」と感じる場面が出てきます。
次回の中編では、相続放棄後にどのような管理や対応が問題になりやすいのか、実務上の注意点を整理します。
・戸籍収集など相続手続きの初動支援
・相続放棄を前提とした資料整理支援
・不動産や家財を含む相続関係全体の整理
・相続放棄後の実務的な対応整理
・必要に応じた弁護士、司法書士等との連携