相続では、預貯金や不動産のように、内容がはっきりした財産だけが問題になるとは限りません。
中には、すでに訴訟中の債権や、第三者との間で権利関係が争われている不動産など、「まだ結論が出ていない財産」が含まれることがあります。
こうした財産があると、
「今の段階で分けられるのか」
「裁判が終わるまで待つしかないのか」
と悩むことになります。
今回は前編として、係争中の財産があると、なぜ遺産分割が難しくなるのかを整理します。
例えば、被相続人が生前、貸したお金の返還を求めて訴訟をしていたケースがあります。
あるいは、土地の所有権や明渡しをめぐって争っていたケースもあります。
このような場合でも、その権利が被相続人に属している以上、原則として相続の対象になります。
つまり、「まだ裁判中だから相続と無関係」というわけではありません。
もっとも、係争中の財産は、預貯金のようには扱えません。
なぜなら、勝訴するのか、敗訴するのか、一部だけ認められるのかで、財産の価値が大きく変わるからです。
たとえば、1,000万円を請求していても、その全額が認められるとは限りません。
場合によっては、ほとんど認められないこともあります。
不動産の権利関係でも、訴訟結果しだいで、そもそも相続財産に含められる範囲が変わることがあります。
遺産分割では、どの財産を誰が取るのかをできるだけ明確に決める必要があります。
しかし、係争中の財産は、その中身も価値も不安定です。
そのため、ある相続人が
「この訴訟中の権利は自分が引き受ける」
と言っても、他の相続人は
「それで本当に公平なのか」
と不安になりやすくなります。
存在しているかどうかより、どこまで評価できるかが問題になるのです。
さらに厄介なのは、係争中の財産が一つあるだけで、相続全体の話し合いが止まりやすくなることです。
ある相続人は
「判決が出るまで待つべきだ」
と考えます。
一方で、別の相続人は
「預貯金や他の不動産だけでも先に分けたい」
と考えるかもしれません。
この違いが、協議全体を難しくします。
・係争中の財産も原則として相続の対象になり得る
・ただし、内容や価値が未確定なため分けにくい
・訴訟結果によって財産価値や権利関係が変わることがある
・そのため、遺産分割全体の話し合いが止まりやすい
係争中の財産がある相続では、「裁判が終わるまで何もできない」と思われがちです。
ですが、実務ではもう少し整理して考える必要があります。
次回の中編では、このような財産を前にしたとき、どのような分け方や進め方が考えられるのかを見ていきます。
・戸籍収集など相続手続きの初動支援
・相続人調査、相続関係説明図の作成
・遺産分割協議書作成支援
・係争中の財産を含む相続関係全体の整理
・必要に応じた弁護士、司法書士等との連携