「とりあえず私が払っておきました」
相談に来られたAさんは、そう言って少し疲れた表情を見せました。
亡くなった父の相続人は、母と子ども3人。
相続財産には、
・自宅不動産
・預金
・賃貸アパート
などがあり、相続税の申告が必要なケースでした。
しかし相続税の申告期限は、被相続人の死亡から10か月以内です。
遺産分割協議はまだまとまっていませんでしたが、納税期限が近づいてきたため、Aさんがとりあえず全額を立て替えて納税しました。
「後で兄弟で精算すればいい」
その時は、そう考えていたのです。
しかし、この判断が後のトラブルの原因となりました。
相続税は、相続人全員でまとめて払う税金ではありません。
法律上は、それぞれの相続人が自分の相続分に応じて納税する税金です。
例えば、
・兄が3,000万円取得
・弟が2,000万円取得
であれば、本来はそれぞれが自分の税額を納めます。
つまり、Aさんが全額を支払ったとしても、法律上は他の相続人の税金を立て替えた状態になります。
実務では、次のようなケースがよくあります。
「とりあえず払っておいて」
「後で精算しよう」
しかし、時間が経つにつれて状況は変わっていきます。
・遺産分割がまとまらない
・相続人同士の関係が悪化
・支払いの話が曖昧になる
その結果、
「そんな話は聞いていない」
「自分の税額はそんなにないはず」
といったトラブルに発展することもあります。
相続税の立替払いは、実務では珍しいことではありません。
特に次のような場合です。
・代表者が手続きを担当している
・相続人の一人が資金を持っている
・納税期限が迫っている
このような事情から、一人が全額を納めるケースは少なくありません。
しかし、後の精算方法を明確にしていない場合、問題が表面化することがあります。
・相続税は各相続人が負担する税金
・一人が払うと「立替払い」になる
・後で精算する前提はトラブルの原因
・期限の問題で代表者が払うケースは多い
相続税の納付は、期限があるため急いで判断されることがあります。
しかし、その場の対応が後のトラブルにつながることもあります。
次回の中編では、相続税の立替払いで実際に起こるトラブルと法的な整理方法を解説します。
・相続人確定と戸籍収集
・相続財産の整理
・遺産分割協議書作成
・相続税申告に向けた資料整理
・税理士と連携した相続手続きサポート