前編では、不動産表示や押印などの形式的ミスによって
遺産分割協議書が差し戻されるケースを解説しました。
中編では、「一見問題なさそうに見える“内容面のミス”」に焦点を当てます。
形式が整っていても、将来のトラブルの火種を抱えた協議書は少なくありません。
よくある条文に、
「本協議書に記載のない財産は、○○が取得する」
という一文があります。
一見便利ですが、実は注意が必要です。
例えば、後から未把握の預金や株式が見つかった場合、
他の相続人が
「そんな話は聞いていない」
と主張する可能性があります。
特に財産調査が不十分なまま包括条項を入れると、後日の紛争の原因になり得ます。
自宅を長男が取得し、他の相続人に代償金を支払うケース。
ここで重要なのは、
・支払金額
・支払期限
・支払方法
を明確にすることです。
「相応の金額を支払う」
「後日支払う」
といった曖昧な表現では、支払が滞った際に紛争へ発展します。
金額と期限は必ず具体的に記載します。
被相続人に借入がある場合、
「債務は長男が引き継ぐ」
と書いても、債権者との関係では法定相続分で責任を負います。
内部的な合意と対外的な責任は別です。
この点を誤解していると、「払う約束だったはずだ」と後で揉めることになります。
配偶者がすべて取得する協議も多いですが、その後の二次相続を考慮しないと、
結果的に税負担や対立が拡大することがあります。
目先の平等感だけでなく、将来の家族関係や税負担まで
視野に入れる必要があります。
「兄の介護負担を考慮して」
「感謝の意を込めて」
といった感情的な文言は、法的効力を強めるものではありません。
むしろ、後の解釈争いを生む可能性があります。
協議書はあくまで“法的な合意文書”です。
・包括条項の使い方に注意
・代償金は金額・期限を明確に
・債務の対外的責任を理解する
・二次相続を見据える
・感情より法的明確性を優先
協議書は、今の合意を形にするだけでなく、将来の争いを防ぐための文書です。
次回の後編では、専門家に依頼する意義とチェック体制の重要性を解説します。
・遺産分割協議書の内容精査
・代償分割条項の設計支援
・相続財産の網羅的整理
・二次相続を見据えた助言
・弁護士・税理士と連携した相続対応