前編では、節税目的で行った養子縁組が、
なぜ相続の場で火種になりやすいのかを見てきました。
中編では、養子縁組が相続にどのような影響を与えるのか、
実務でどこが争点になりやすいのかを整理します。
まず大前提として、養子は法律上、実子と同じ相続人です。
相続分も原則として同一であり、
・実子2人+養子1人
であれば、相続分は「3分の1ずつ」になります。
この点を理解しないまま相続が始まると、実子側は強い不満を抱きやすくなります。
「相続税対策のための形式的な養子なのに、なぜ同じ取り分なのか」
ここが最初の大きな摩擦点です。
養子縁組の節税効果は、基礎控除額や生命保険非課税枠が増える点にあります。
しかし実務では、この“節税の成果”が、
相続分の減少という形で実子に跳ね返ることになります。
・税金は減った
・でも、自分の取り分も減った
この構図が、「節税のために犠牲にされた」という感情を生みやすいのです。
揉めるケースで必ず出てくるのが、養子縁組は誰の意思だったのかという点です。
・被相続人本人の強い希望だったのか
・周囲が勧めたものだったのか
・税理士や家族主導ではなかったか
特に、実子が「聞いていない」「納得していない」場合、
養子縁組そのものへの不信感が強まります。
「本当に父(母)の意思だったのか」
という疑念は、相続全体を不安定にします。
嫁養子や婿養子の場合、法的には相続人でも、
感情的には“外から来た人”と見られがちです。
・家族関係の距離感
・これまでの付き合い方
・日常的な役割
こうした積み重ねが弱いほど、相続の場で拒否反応が強くなります。
「家族として迎えたのか」
「相続対策の道具だったのか」
この評価が分かれることが、対立を深める原因になります。
実子側からよく出る質問が、「養子縁組を無効にできないのか」という点です。
結論として、適法に成立している養子縁組を、
相続を理由に無効にすることは極めて困難です。
節税目的であっても、それだけで無効になることはありません。
この現実を知らずに争い始めると、時間と感情だけが消耗されていきます。
・養子は実子と同じ相続権を持つ
・節税効果が不公平感に変わりやすい
・養子縁組の意思形成が重要な争点になる
・嫁養子・婿養子は感情対立が起きやすい
・養子縁組の無効主張はハードルが高い
次回の後編では、養子縁組がある相続で、実務上どう折り合いをつけるのか、
揉めないために必要な生前対策を解説します。
・養子縁組がある相続の全体整理
・相続人・相続分の確認
・感情対立を踏まえた協議方針の整理
・遺言書・生前対策の助言
・専門家と連携した相続サポート