相続対策として知られている方法の一つに、養子縁組による節税があります。
「相続税が下がると聞いた」
「家族も納得しているつもりだった」
ところが、この“つもり”が、相続の現場では大きな火種になることがあります。
亡くなったのはAさん(80代)。
生前、税理士の助言を受け、節税目的で養子縁組をしていました。
養子になったのは、長男の妻。
いわゆる「嫁養子」です。
Aさんとしては、
・相続税の基礎控除を増やしたい
・家族として長く付き合ってきた
・特に問題は起きないだろう
そう考えていました。
しかし、相続が始まった瞬間、家族の空気は一変します。
法定相続人は、実子2人と養子1人。
遺産分割の話し合いで、実子の一人がこう口にしました。
「なぜ、兄の奥さんが同じ相続人なんですか?」
「節税のためって聞いていません」
この言葉をきっかけに、それまで表に出てこなかった不満が、一気に噴き出しました。
・家族の一員とは思っていなかった
・相続分が減るのは納得できない
・話を聞いていない
養子縁組そのものが、問題の中心になっていきます。
ここで重要なのは、養子縁組自体は、法律上まったく正当だという点です。
養子は、実子と同じ相続権を持ちます。
節税目的であっても、形式が適法であれば、相続人として扱われます。
つまり、「節税のためだったから無効」ということにはなりません。
では、なぜここまで揉めるのでしょうか。
理由は単純で、家族の認識と法律のズレがあるからです。
・法律では「相続人」
・家族感覚では「外から来た人」
このギャップが埋まらないまま、相続の話し合いが始まると、感情的な対立に発展しやすくなります。
さらに問題を複雑にするのが、「節税のためだった」という説明です。
・お金のために養子にしたのか
・家族として迎えたわけではないのか
・自分たちは軽視されたのではないか
こうした疑念が、実子側に生まれやすくなります。
節税という合理的な判断が、感情の面では受け入れられないことも多いのです。
・養子縁組は節税対策として使われることがある
・法律上、養子は実子と同じ相続権を持つ
・家族の認識と法律のズレがトラブルの原因
・「節税のため」という説明が火種になりやすい
次回の中編では、養子縁組が相続に与える具体的な影響、
どこで争いが起きやすいのかを、実務目線で整理します。
・養子縁組が絡む相続関係の整理
・相続人・相続分の確認
・感情対立を踏まえた事前整理と助言
・遺産分割協議に向けた実務サポート
・専門家と連携した相続対応