相続の相談で、一定数必ず出てくるのが賃貸アパートを含む相続です。
「不動産があるから安心」
「家賃収入が入るなら問題ない」
そう思われがちですが、
実務では相続後に一気に話が重くなるテーマでもあります。
なぜなら、賃貸アパートの相続は、
単なる「財産の分け方」では終わらないからです。
亡くなったのは父・Aさん。
地方都市に、築30年の賃貸アパートを1棟所有していました。
相続人は次の3人です。
・長男(会社員・地元在住)
・長女(道外在住)
・次男(自営業・不動産知識あり)
父は生前、管理会社と付き合いながらも、
最終判断はすべて自分で行っていました。
葬儀後、遺産分割の話し合いが始まったとき、
最初はこう考えていました。
「とりあえず3人で相続すればいいよね」
しかし、話を進めるうちに、
別の問題が浮かび上がってきます。
賃貸アパートについて、多くの方が誤解しているのが、
「家賃収入=何もしなくていいお金」
というイメージです。
現実の家主業は、次のような判断の連続です。
・修繕やリフォームの判断
・入居者対応やクレーム対応
・空室対策
・管理会社とのやり取り
これらを誰が担うのかを決めないまま相続すると、
必ず行き詰まります。
前編でまず押さえておきたいのが、賃貸アパートを
相続人全員の共有にした場合のリスクです。
共有にすると、
・修繕や売却の判断がしづらい
・意見が割れると何も決まらない
・責任の所在が曖昧になる
特に、
「誰が実務をやるのか」
「その負担をどう評価するのか」
を決めていないと、不満が溜まりやすくなります。
実務でよくあるのが、次のような構図です。
・実際の管理は長男が担当
・収益は法定相続分で平等に分ける
この場合、長男には
「自分ばかり手間がかかる」
という不満が残りやすくなります。
一方、他の相続人は
「財産を平等に分けただけ」
と感じており、認識のズレが生まれます。
賃貸アパートの相続は、相続と同時に
小さな不動産経営を引き継ぐことでもあります。
だからこそ、
「誰がどこまで関与するのか」
「責任と権限をどう分けるのか」
を考えずに進めると、後から必ず揉めます。
・賃貸アパート相続は分け方だけでは終わらない
・家主業という“役割”が発生する
・共有は意思決定を難しくする
・実務負担と収益配分のズレが不満を生む
次回の中編では、賃貸アパート相続を法的にどう整理するのか、
共有・単独・法人化などの選択肢を、実務目線で解説します。
・賃貸不動産を含む相続全体の整理
・共有リスクを踏まえた分割方針の検討
・家主業の役割分担・負担整理
・遺産分割協議書への反映支援
・弁護士・司法書士と連携した相続対応