相続の相談で、意外なほど多いのが、次のような一言から始まるトラブルです。
「気づいたら、遺品が全部処分されていました」
「形見分けの話をする前に、もう何も残っていないんです」
遺品整理や形見分けは、一見すると些細な問題に見えます。
しかし実務では、相続全体を壊しかねない火種になることも少なくありません。
今回は、なぜ「遺品」がここまで大きな争いになるのか、
その入口部分を整理します。
亡くなったのは母・Aさん。
相続人は次の3人でした。
・長男
・長女
・次女
母は生前、
「私が亡くなったら、好きな物を形見にしてね」
と話していたものの、具体的な指示は残していませんでした。
葬儀が終わって数日後、実家の片付けを始めたのは長男でした。
「古い物ばかりだし、早く片付けたほうがいい」
そう考え、衣類や家具、小物類を業者に依頼して処分しました。
ところが後日、長女と次女が実家を訪れたとき、
こう言います。
「お母さんの着物は?」
「アルバムや手紙はどこ?」
その瞬間から、家族の空気は一変しました。
遺品トラブルの多くは、
「遺品は財産じゃない」
という誤解から始まります。
確かに、経済的な価値が小さい物も多く、
預貯金や不動産ほど注目されません。
しかし、遺品の多くは、
法律上は相続財産に含まれる可能性があります。
価値の有無ではなく、
「被相続人が所有していた物かどうか」
が判断基準になるからです。
相続開始後、
相続財産は、
原則として相続人全員の共有状態になります。
つまり、
一人の判断で
処分・廃棄することは、
他の相続人の権利を侵害する可能性があります。
たとえ悪意がなくても、
「勝手に捨てた」
という事実だけで、強い不信感を生むのです。
形見分けは、法律よりも感情が前に出やすい場面です。
・金銭的価値はなくても手放したくない
・自分だけが大切にしていた思い出がある
・相談もなく処分されたことが許せない
こうした感情が重なり、相続全体の話し合いまで
進まなくなるケースもあります。
・遺品の勝手な処分は相続トラブルの火種
・遺品も相続財産になり得る
・一人の判断が不信感を生む
・形見分けは感情面の配慮が不可欠
次回の中編では、遺品や形見分けは法的にどう扱われるのか、
勝手に処分した場合の問題点を、もう一段踏み込んで解説します。
・遺品整理と相続財産の整理
・形見分けを巡る認識整理
・相続人間の合意形成サポート
・感情対立を踏まえた実務的助言
・相続トラブルを防ぐための事前整理