「父が住んでいた家を相続したはずなのに、
突然、地主から“建て替えは認めない”“名義変更には承諾が必要だ”と言われた」
借地権付き建物の相続では、
このような相談が少なくありません。
前編では、
借地権とはそもそも何か、そしてなぜ相続の場面で地主とのトラブルが起きやすいのかを、
実例をもとに整理します。
被相続人は父。
相続人は長男Aさん一人です。
父は長年、他人の土地を借りて家を建て、
いわゆる借地権付き建物として暮らしていました。
父の死亡後、Aさんは当然のように
「家も土地も自分が相続した」
と考えていましたが、数か月後、地主から連絡が入ります。
「相続は構いませんが、
建て替えや売却をするなら承諾が必要です。
条件について話し合いましょう」
Aさんは初めて、
“土地は自分のものではない”
という現実に直面しました。
借地権とは、
他人の土地を借りて、その上に建物を所有する権利です。
建物は借地人(相続人)のものですが、
土地の所有権は地主にあります。
この「建物は自分のもの、土地は他人のもの」という構造が、
相続の場面で大きな誤解を生みやすくします。
ここで重要なポイントがあります。
借地権は相続によって当然に承継されるため、
相続そのものに地主の承諾は不要です。
つまり、
「相続すること自体を拒否される」
ということは、原則としてありません。
しかし、
多くのトラブルはこの先で起こります。
問題になりやすいのは、
以下のような場面です。
・建物を建て替えたい
・第三者に売却したい
・借地権を譲渡したい
・地代や更新条件を見直したい
これらは、
地主の承諾が必要になる行為です。
相続人が
「相続したのだから自由にできる」
と考えて行動すると、
地主との認識のズレが一気に表面化します。
実務では、
借地契約書を見たことがないまま相続しているケースも珍しくありません。
・旧借地法か、新借地借家法か
・更新条件はどうなっているか
・承諾料の定めはあるか
これらを確認しないまま話を進めると、
交渉は不利になりがちです。
・借地権付き建物は「建物は自分、土地は他人」の構造
・相続自体に地主の承諾は原則不要
・建て替えや売却などで地主との対立が起きやすい
・契約内容を知らないまま相続しているケースが多い
次回(中編)では、
地主の承諾が必要になる具体的なケースと、
承諾料・条件交渉の考え方を解説します。