「遺言書には“長男にすべて相続させる”と書いてありました。
でも、それって本当に許されるんですか?」
相続の現場で、非常に多い相談です。
ここで登場するのが、遺留分侵害額請求という制度です。
前編では、
遺留分とは何か/なぜこの制度が“公平”を巡る争いを生みやすいのかを、
ケースを通じて整理します。
被相続人は父。
相続人は、長男Aさん、長女Bさん、次男Cさんの3人兄弟です。
父は遺言書で、
「全財産を長男Aに相続させる」
と明記していました。
Aさんは、
「父の面倒を一人で見てきたのは自分だ。これは当然だ」
と考えています。
一方、BさんとCさんは、
「何ももらえないのはおかしい」
と強い不満を抱きました。
ここで問題になるのが、
遺留分侵害額請求ができるかどうかです。
遺留分とは、
**一定の相続人に法律上保障された“最低限の取り分”**のことです。
対象となるのは、
兄弟姉妹には、遺留分はありません。
つまりこのケースでは、
Bさん・Cさんには、
遺留分を主張できる可能性があります。
よくある誤解が、
「遺言書があれば、何を書いても通る」
という考えです。
確かに遺言書は強力ですが、
遺留分を侵害する内容であれば、金銭請求の対象になります。
ここが重要なポイントです。
遺留分侵害額請求は、
「遺言を無効にする制度」ではありません。
あくまで、
**侵害された分を“お金で調整する制度”**です。
遺留分を巡る争いが激しくなりやすい理由は、
単なる金額の問題ではありません。
こうした感情の積み重ねが、
「法律上の公平」と衝突します。
遺留分は、
法律上は“公平”を担保する制度ですが、
家族感情の面では
「納得できない制度」と感じられることも多いのです。
・遺留分とは、一定の相続人に保障された最低限の取り分
・遺言書があっても、遺留分侵害額請求は可能
・遺留分は遺言を無効にする制度ではない
・「公平」を巡る感情のズレが、兄弟間の対立を深める
次回(中編)では、
遺留分侵害額請求は具体的にどう計算され、どう請求するのか、
実務の流れを解説します。