「家族なんだから話せば分かる」——
そう信じて始めた遺産分割協議が、気づけば数か月、あるいは数年も進まない。
相続の現場では、驚くほどよくある光景です。
前編では、調停に行く前に知っておきたい
“なぜ協議がまとまらないのか”という根本原因をケースとともに整理します。
被相続人は父Hさん。
相続人は、長男Aさん、次男Bさん、長女Cさんの3名。
父の自宅と預金が遺産でしたが、兄弟の主張は平行線になりました。
何時間話しても堂々巡り。しまいには、
「お前は何もしていなかった」
「昔のことを蒸し返すな」
と感情的な言い争いになり、協議は完全に停止しました。
多くの人が誤解していますが、協議が止まる原因は
法律や制度が複雑だからではありません。
実務で頻発する原因は次の3つです。
介護の負担、過去の不満、兄弟間の上下関係など、
相続とは関係ない“感情の残骸”が協議の席に持ち込まれます。
「何をどう分けるために今話しているのか」が曖昧だと、
議論が迷子になり、誰も譲れなくなります。
いきなり「家は誰がもらうか」から話し始めるのは、
いきなり数学の最終問題を解けと言われているようなものです。
協議は本来、
①財産の全体像 → ②評価 → ③分割案の比較
という順番で進めるのが鉄則です。
前編で押さえておくべきポイントは、
**調停は“最後の手段”ではなく、“話し合いを再開させる手段”**だということです。
次の条件に1つでも当てはまるなら、調停が視野に入ります。
調停は、裁判ではなく、中立の調停委員が話し合いを整理してくれる制度です。
感情ではなく「論点」に戻してくれるので、協議の行き詰まりを解消する効果があります。
・遺産分割がまとまらない原因の多くは“感情”にある
・協議は「財産の全体像 → 評価 → 分割案」の順で進めるのが基本
・調停は“争う場”ではなく、話し合いを再開させる仕組み
・行き詰まりを感じたら、早めに専門家か調停の利用を検討する
次回(中編)では、
実際に調停がどんな流れで進むのか、何を準備すれば良いのか
を詳しく解説します。