前編では、外国籍・海外在住の相続人がいる場合に、
「相続人であること」と「本人であること」の証明が複雑になる理由を整理しました。
中編では、日本側と外国側の書類の分け方、署名証明の取得方法など、
“必要書類の集め方”にフォーカスしました。
後編では、これらを踏まえたうえで、実際に遺産分割協議をどう進めるか、
海外在住相続人とのコミュニケーションをどう設計するかを解説します。
海外在住の相続人は、時差や家庭事情から、日本の家族との連絡が途絶えがちです。
しかし、相続協議は「言った・言わない」が致命的になるため、
連絡は必ず“書面(テキスト)で残る形”が基本です。
効果的なのは次の3段階です。
① まずメール・メッセージで概要を共有
② 詳細は PDFの説明資料にまとめて送付
③ 重要な合意は、署名の前に「協議内容メモ」を双方で確認
「とりあえず電話で説明した」は後のトラブルの元です。
距離があるからこそ、“記録に残す設計”が必須になります。
外国籍相続人との協議では、
「資料が揃っていない段階で分け方の話になる」ことが非常に多いです。
順番は必ず次の通りにします。
① 財産の全体像を共有(預金・不動産・保険など)
② 各財産の評価額を日本側で整理
③ 分割案を複数パターン提示
Bさん(海外相続人)は、日本の相続制度や不動産評価を知らないことが多く、
評価額や必要費用を「数字」で見せるだけで納得度が大きく変わります。
この“見える化”があるかどうかで、協議のスムーズさが数倍変わります。
海外への郵送は時間もコストもかかります。
そのため、いきなり協議書を送るのではなく、PDFで次の作業をします。
これを事前にクリアしてから郵送すれば、
「届いたら誤記だった」「書き直して再送」
といった最悪の事態を避けられます。
経験上、次の3つで摩擦が起きやすいです。
① 「なぜこんなに書類が多いの?」問題
→ 解説資料をつけて、理由を先に説明する。
② 「海外に住んでいるのに、なぜ日本の法律に従う必要があるの?」問題
→ 日本国内の財産は日本法が原則であることを静かに説明。
③ 「署名証明を取るのが面倒」問題
→ 公証役場/在外公館のメリット・デメリットを比較して提案する。
“納得の土台”作りがないまま事情だけ押し付けると、
協議が数ヶ月止まりがちです。
・海外相続人との協議は「記録を残す設計」が最重要
・財産の全体像 → 評価 → 分割案の順で“見える化”するとスムーズ
・署名証明の取得前に必ずPDFで内容確認
・摩擦ポイント(書類の多さ・日本法・署名証明)は先に説明しておく
国際色のある相続は、国内の相続とは別物です。
だからこそ、順番・説明・記録という3本柱を押さえるだけで、
驚くほどスムーズに進みます。