「相続手続きを進めたいのに、相続人の一人と連絡が取れない。」
これも現場では珍しくありません。仲が悪い、音信不通、住所不明、海外にいる…理由は様々ですが、共通するのは “相続手続きが止まる” という現実です。今回は、兄弟の一人が行方不明で遺産分割が進まなくなったケースをもとに、前編では「なぜ止まるのか」「まず何から着手するか」を整理します。
被相続人は父Pさん。相続人は長男Aさん、長女Bさん、次男Dさんの3人。
父の預金解約や不動産名義変更を進めようとしたところ、次男Dさんと数年連絡が取れていないことが判明しました。携帯は不通、SNSも反応なし。兄妹は「もうこのまま2人で進められないか」と考えますが、ここに大きな落とし穴があります。
相続手続きには、原則として相続人全員の関与が必要です。
特に遺産分割協議は、相続人全員の合意(署名押印)がないと成立しません。相続登記や預金解約でも、遺産分割協議書など全員の同意を前提とする場面が多く、Dさんが欠けると進められなくなります。
「連絡が取れないのだから、Dさん抜きで…」という発想は、後から無効・やり直しのリスクが高く、結果的に時間も費用も増えがちです。
行方不明対応で最初にやるべきは、推測や憶測ではなく 公的記録で追う ことです。具体的には次の順番です。
「行方不明」といっても、単に転居して住所が変わっているだけ、ということもあります。まずは“現住所が取れるか”で、取れる対応がガラッと変わります。
調査の結果、次のどちらかに分かれます。
後編に向けて重要なのは、「いきなり裁判所」ではなく、まず到達可能性を潰すことです。裁判所手続きは時間も費用もかかるため、最短ルートの見極めが大切になります。
・相続人が欠けると遺産分割協議が成立せず、手続きが止まりやすい
・まずは戸籍・戸籍の附票・住民票で住所を追い、公的記録で状況確認
・住所が分かるかどうかで「連絡ルート」か「裁判所ルート」かが決まる
次回(中編)では、住所が分かった場合の具体的な連絡方法と、協議参加を促す実務(文面・注意点)を解説します。