Fさんの死後、遺産の内容は自宅不動産、預貯金、生命保険金など。
名義のほとんどはFさん本人で、後妻Iさんが同居していました。
相続人は3人——
後妻Iさん、前妻との子どもGさん、Hさん。
一見シンプルに見えますが、「生活していたIさん」と「長年離れていたG・Hさん」では、
遺産への“感じ方”がまったく異なります。
最初の協議では、Iさんが「自宅だけは私に残してほしい」と訴え、
Gさん・Hさんは「公平に分けてほしい」と応じませんでした。
やがて話し合いは感情的になり、協議は中断。
相続は「法」よりも「心」が複雑に絡む——まさにその典型です。
Iさんにとって自宅は、思い出と生活の基盤。
しかし、Gさん・Hさんにとっては“父の財産の一部”にすぎません。
「もう何十年も顔を合わせていないのに、どうして?」
Iさんの胸にはそんな思いがあり、
一方Gさん・Hさんには「父の財産を守る責任がある」という意識がありました。
この“心の距離”が法的な話し合いを難しくします。
しかもIさんの連れ子Jさんは、長年一緒に暮らしてきたにもかかわらず、
法律上の相続権がない。
Jさんの存在もまた、協議の空気を重くしていきました。
もう一つの焦点が「生命保険金」。
受取人はIさんに指定されており、保険金は相続財産ではない——
つまりIさんの“固有の財産”として扱われます。
これを知ったGさん・Hさんは、「それなら自宅は譲れない」と反発。
「法律ではそうでも、気持ちが納得できない」と言い、再び話し合いは暗礁に乗り上げました。
このように、法的には正しくても、感情的には受け入れにくい状況が、
再婚家庭の相続では頻繁に起こります。
法の線引きが、かえって心の溝を深めてしまうのです。
調停委員の助けを借り、IさんとG・Hさんは徐々に冷静さを取り戻しました。
「法律は冷たいけれど、心までは否定していない」——
そう言われた言葉が、Iさんの胸に残りました。
最終的には、Iさんが自宅を相続し、預貯金の一部を子どもたちに分ける形で合意。
完全に納得とはいかなくても、「父を想う気持ち」に立ち返ることで、話し合いがまとまったのです。
・再婚・複雑な家族構成における法定相続関係の整理
・感情面も踏まえた遺産分割協議書・説明資料の作成
・遺言書・公正証書の作成支援
・生命保険金・預貯金・不動産など資産区分の整理
・司法書士・税理士・弁護士との連携による一元対応
次回(第6話③・後編)では、
Iさん・Gさん・Hさんがどのように“わだかまり”を乗り越え、
新しい家族の関係を築いていったのかを描きます。