相続放棄が受理されると、放棄した人は初めから相続人でなかったものとみなされます。ただし直ちに完全に手を離れてよいわけではありません。居住中の自宅や家財、車、賃貸契約、公共料金など、現場を安全に保つための最小限の管理が必要です。
相続財産が失われたり損傷したりしないように、鍵の施錠・雨漏りの応急処置・郵便物の転送・水道ガスの停止など、保存のために必要最小限の行為は認められます。必要費を立て替えた場合は、相続財産からの償還を求められる余地があります。一方で、売却・廃棄・贈与など価値を変動させる処分行為は不可。家財を勝手に持ち出す、車の名義変更をする等は避けてください。
家財や車、通帳・印鑑は相続財産です。勝手な処分・持出し・使用は避け、現況写真・簡易台帳で一覧化し、施錠保管しておきます。車検・保険が切れる前の安全確保(保管場所の確保・一時抹消の検討など)は「保存行為」として実務上求められますが、名義変更や売却は不可。口座は凍結連絡のみにとどめ、引出しは行いません(仮払いや解約は相続手続で)。
相続人がいなくなる見込みの場合は、市区町村や利害関係者から相続財産管理人の選任申立て(家庭裁判所)が検討されます。管理人選任後は、債権者対応・家財の処分・不動産の管理は管理人の職務になります。
※家庭裁判所への申立書類の作成・代理は弁護士の業務領域です。当事務所では、相続関係の整理(相関図・財産目録)や関係先への連絡文案の作成など、周辺実務を支援します。
相続放棄後の現況整理チェックリストの提供、関係先への連絡文案、相続関係説明図・財産目録の作成、保存行為の記録化(写真台帳・作業ログ)をサポートします。登記や税務は司法書士・税理士と連携、家庭裁判所の申立てが必要な場面は弁護士をご紹介。
「放棄したけれど、家と家財をどうしておくか…」というときの安全第一の段取りを、実務目線でご案内します。