前編では、相続財産は現金や預貯金のように目に見えるものだけではなく、未払い金や請求権のような“まだ受け取っていない権利”も含まれ得ること、そして、それらは請求しなければ表に出てこないため見落とされやすいことを整理しました。
では、実際にはどのような未払い金・請求権が相続で見落とされやすいのでしょうか。中編では、実務で特に注意したい典型例を整理します。
まず典型的なのが、被相続人が人に貸していたお金や、未払いの家賃です。
たとえば、知人や親族に貸していたお金が返済途中だった、賃貸物件を持っていて数か月分の家賃が未払いになっていた、といったケースです。
こうした権利は、通帳残高だけを見ていても分かりません。
借用書、賃貸借契約書、家賃の入金履歴、メモ、手帳などを見て初めて、
「まだ受け取っていないお金がある」
と分かることがあります。
特に親族間の貸し借りは口約束のことも多く、見落としやすい典型例です。
被相続人が個人事業をしていた場合には、売掛金や未収報酬も重要です。
たとえば、商品やサービスを提供済みなのに、まだ代金が支払われていない場合、その請求権は相続財産に含まれる可能性があります。
しかし、相続人が事業内容を把握していないと、請求漏れのまま埋もれてしまうことがあります。
帳簿、請求書、メール、契約書などを確認しなければ分からないことも多く、預貯金や不動産より把握に手間がかかる財産です。
さらに注意したいのが、保険金や給付金です。
たとえば、入院給付金、死亡保険金、還付金、未請求の年金や補助金など、手続をしなければ受け取れないお金がある場合があります。
もっとも、ここで大切なのは、全てが同じように相続財産になるわけではないという点です。
受取人が特定されている保険金のように、相続財産とは別に扱われることがあるものもあれば、被相続人に帰属していた金銭請求権として相続財産に入るものもあります。
そのため、
「請求できるお金がある」
というだけで一括りにせず、その性質を見極める必要があります。
・未収家賃や貸付金は通帳だけでは把握しにくい
・事業をしていた場合は売掛金や未収報酬にも注意が必要
・保険金や給付金は相続財産になるものとならないものがある
・見えにくい財産ほど資料を丁寧に確認する必要がある
未払い金や請求権は、現金として見えていないため、相続整理の中で後回しになりやすい財産です。
ですが、だからこそ意識して探さなければ、本来受け取れるはずの財産を取りこぼすことがあります。
次回の後編では、こうした“見えにくい財産”を相続の中でどう整理し、どう請求につなげるべきかを見ていきます。
・戸籍収集など相続手続きの初動支援
・相続人調査、相続関係説明図の作成
・遺産分割協議書作成支援
・未払い金や請求権を含む相続財産全体の整理支援
・必要に応じた弁護士、司法書士、税理士等との連携