相続が始まると、被相続人名義の預貯金や現金について、
「とりあえず葬儀費用にあてた」
「入院費の支払いに使った」
「家の維持費として引き出した」
といったことが起こる場合があります。
実際、亡くなった直後は手続も多く、相続人の一人が慌ただしくお金を動かさざるを得ない場面もあります。
そのため、使った本人には
「必要な支出だった」
「後で説明すれば問題ない」
という感覚があることも少なくありません。
しかし、相続では、この「先に使ってしまったお金」が、後から大きな問題になることがあります。
今回は前編として、遺産分割前に相続財産の一部を使ってしまうと、なぜ揉めやすいのか、その基本的な構図を整理します。
被相続人が亡くなると、その財産は特定の相続人のものになるわけではなく、相続人全員に関わる財産として扱われます。
そのため、たとえ家族のために使ったつもりでも、一人の判断で預金を引き出したり、現金を使ったりすると、後から
「なぜ勝手に動かしたのか」
という疑問が出やすくなります。
特に、使った人が被相続人と同居していたり、通帳や印鑑を管理していたりすると、他の相続人から見れば
「自分だけ事情を知っていて先に使ったのではないか」
という不信感につながりやすくなります。
相続で厄介なのは、遺産分割前にお金を動かしたこと自体より、その使い道や必要性を後からきちんと説明できるかどうかです。
たとえば、葬儀費用、病院代、施設費用、公共料金など、一定の必要性が認められやすい支出もあります。
ですが、領収書が残っていない、誰のための支出か分からない、金額の根拠が曖昧、といった状態だと、必要な支出だったとしても疑いを招きやすくなります。
つまり、使った本人に悪気がなくても、説明できなければ、他の相続人には
「使い込まれたのではないか」
と映ることがあるのです。
この問題が難しいのは、単なる金額の話で終わらないことです。
お金を動かした相続人は
「自分が全部対応していたのに責められるのか」
と感じることがあります。
一方で、他の相続人は
「勝手に使ったこと自体が納得できない」
と感じます。
そのため、最初は数万円、数十万円の支出でも、後になると
「誰が親のことをしていたのか」
「誰が勝手に決めたのか」
という家族関係の不満にまで広がりやすくなります。
・相続開始後の財産は相続人全体に関わる財産である
・遺産分割前に使ったお金は後から問題になりやすい
・大切なのは使い道や必要性を説明できること
・少額でも感情的対立に発展しやすいテーマである
遺産分割前に相続財産の一部を使うことは、現実には起こり得ます。
ですが、その時点では「必要な支出」でも、後から説明が足りないと、大きな不信感につながることがあります。
次回の中編では、どのような支出が特に問題になりやすいのか、実務上の典型例を整理します。
・戸籍収集など相続手続きの初動支援
・相続人調査、相続関係説明図の作成
・遺産分割協議書作成支援
・相続開始後の預貯金や支出の整理支援
・必要に応じた弁護士、司法書士、税理士等との連携