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    前編では、死亡直前の財産処分があっても、それだけで直ちに無効になるわけではなく、問題になるのは本人の判断能力や処分の経緯であることを整理しました。

    では、実際にはどのような事情があると、その財産処分の有効性に疑問が生じやすいのでしょうか。

    中編では、相続実務で特に争点になりやすい判断ポイントを見ていきます。


    ■まず問題になるのは本人の判断能力

    死亡直前の財産処分で最も大きな論点になりやすいのは、処分当時に本人に判断能力があったかどうかです。

    たとえば、重い認知症が進んでいた、入院中で意識状態が不安定だった、会話が十分に成り立たなかった、といった事情があると、本人が処分の意味や結果を理解していたのかが問題になります。

    逆に、高齢であっても受け答えがしっかりしており、財産の内容や処分の目的を理解していたことがうかがえる場合には、有効と判断される余地があります。

    つまり、年齢や病名だけではなく、その時点で実際にどのような状態だったのかが重要になります。


    ■誰が主導していたのかも大きなポイント

    もう一つ重要なのが、その財産処分を誰が主導していたのかという点です。

    たとえば、預金の払戻しや送金が、本人ではなく特定の親族の主導で進められていた場合、他の相続人としては
    「本人の意思ではなく、周囲が動かしたのではないか」
    という疑いを持ちやすくなります。

    家族が補助すること自体は珍しくありません。

    ですが、本人の意思確認がどのようにされたのかが見えにくいと、不信感は強まりやすくなります。


    ■処分の目的や流れに不自然さがないか

    財産処分の有効性を考えるうえでは、その処分がどのような目的で行われ、流れとして自然だったのかも大切です。

    たとえば、入院費や施設費用の支払い、医療費の確保、生活上やむを得ない不動産売却などであれば、一定の合理性があります。

    一方で、死亡の直前に、従来ほとんど関わりのなかった親族へ急に多額の送金がされていたり、説明のつきにくい名義変更がされていたりすると、その処分の背景に疑問が生じやすくなります。

    相続では、金額の大きさだけでなく、なぜその時期に、その方法で、その相手に処分が行われたのかが重要になります。


    ■中編まとめ

    ・死亡直前の財産処分では本人の判断能力が大きな争点になる
    ・誰が主導していたのかも重要な判断材料になる
    ・処分の目的や時期、相手方に不自然さがないかが見られる
    ・見た目の印象だけでなく具体的事情を丁寧に確認することが重要

    死亡直前の財産処分が問題になるかどうかは、単に「怪しく見えるか」では決まりません。本人の状態、手続の流れ、処分の目的などを総合して見ていく必要があります。

    次回の後編では、こうした争いを防ぐために、家族としてどのような備えや対応をしておくべきかを整理します。


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