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    ■「リフォーム費用は俺が出した」兄の新たな主張

    遺産分割の話し合いが進まない中、兄の健一さんは新たにこう言い出しました。
    「この家は俺が自腹でリフォームしたんだ。だからこの家は実質、俺のもんだろ?」

    確かに、父が存命中に水回りや屋根の修繕を行い、費用の一部は健一さんが支払っていました。
    ただし、工事契約書は父名義で、領収書にも父の名前が記載されています。
    「お金を出した人」と「名義上の所有者」が異なるこのようなケースは、実務上少なくありません。

    ■「名義」と「実質負担」は別の問題

    不動産の所有権は登記名義によって判断されます。
    リフォーム費用を負担したとしても、そのことだけで自動的に所有権が移るわけではありません。
    たとえば、子が親の家を修繕した場合、それは贈与・出資・貸付のいずれかとして扱われます。
    どの性質に当たるかは、工事当時の状況や意図、支出額、関係性など総合的に見て判断されます。

    もし「親に代わって家を良くしたい」という気持ちから支出したのであれば、法的には“親への贈与”とみなされる可能性が高くなります。
    一方、将来の相続を見越して「自分の持分を増やすための出資」という意図が明確であれば、契約書や合意書として残しておく必要があります。

    「実質的な貢献」は寄与分で主張する

    兄のように、家の維持・改修に一定の費用を出してきた場合は、寄与分として評価できる余地があります。
    ただし、寄与分が認められるためには、
    ・費用を出した目的(財産維持のためか、単なる好意か)
    ・支出額や期間の明確化
    ・工事契約書・領収書などの証拠
    が必要です。

    これらを裏づけとして主張すれば、遺産分割協議の中で「兄の寄与を考慮した上で、相続分を調整する」という解決も可能になります。

    ■次回(後編)予告

    最終回となる後編では、相続人たちが専門家の助言を受けて冷静に話し合いを進め、「家をどう分けるか」を最終的に決めていく場面を描きます。
    「住み続けたい人」と「現金を希望する人」――
    双方が納得できる“落とし所”とはどのような形なのでしょうか。

    ■小樽つちや行政書士事務所でサポートできること

    当事務所では、
    ・不動産に関する寄与分・特別受益の整理
    ・工事やリフォーム費用の証拠整理支援
    ・公平な遺産分割協議書の作成
    を行っております。

    相続の背景には、家族の思い出や努力が詰まっています。
    その「思い」を正しく形にすることこそ、当事務所の役割です。
    どうぞお気軽にご相談ください。


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