■ 延納・物納とは?
相続税を一括で払えないときの救済策が「延納(分割払い)」と「物納(財産で納める)」です。原則は現金一括納付ですが、一定の要件を満たせば利用できます。
まずは延納を検討し、延納でも困難な場合に物納を検討するのが基本の流れです。
■ 延納(分割払い)のポイント
- 要件:一括納付が困難で、担保提供(原則)ができ、納付計画が現実的であること。
- 期間:原則5年以内、不動産等が多い場合は最長20年まで。
- 利子税:延納期間・担保の有無で年率が設定されます(利息相当の負担)。
- 手続期限:申告期限(相続開始から10か月)までに延納申請書と担保目録等を提出。
- 担保の例:不動産・有価証券・定期預金など。担保価値は税務署の評価で決まります。
使うとしたら:自宅や収益不動産を売らずに納税したい、金融機関からの借入で利息負担が重い、といったケース。
■ 物納(財産で納める)のポイント
- 位置づけ:延納しても納付困難な場合の最後の手段。
- 対象財産の優先順位:1. 不動産(宅地・建物)→ 2. 有価証券 → 3. 動産等の順。
- 適否の判断:権利関係が明確、管理・換価が容易など受入基準があります。境界未確定の土地、共有が複雑、賃借権付きで処分困難…などは却下されやすい点に注意。
- 手続期限:こちらも申告期限までに物納申請(原則、延納申請も同時)。不備があると補正や却下の可能性があります。
使うとしたら:現金化が著しく困難、売却で生活基盤を失う、相続人間で共有を解消しつつ納税したい、など。
■ 実務の進め方
- 財産目録と納税資金計画を作成(売却・借入・保険解約等の選択肢を並べる)
- 延納の返済計画案を作り、担保候補の書類(登記簿・評価証明等)を収集
- 延納でなお不足する場合は、物納候補資産の適否(境界・地目・共有状態・賃貸の有無)を事前点検
- 申告と同時に延納(+物納)申請。受理後、税務署と担保・対象財産を調整
- 認可後、納付スケジュールに沿って実行
■ よくあるつまずき
- 期限ギリギリで申請書・評価資料が不足→不許可や再提出で時間切れに。
- 物納候補の境界未確定・越境・私道負担などで受入不可。
- 延納の利子税を見落として資金が回らない。
- 物納で共有持分を出しても使いづらく、認可されにくい。
■ ほかの資金繰り策も比較を
- 小規模宅地等の特例で評価を下げる(税額自体の圧縮)。
- 生命保険の死亡保険金を納税資金として活用。
- 不動産の部分売却・リースバック・借入の組合せ。
- 二次相続を見据えた分割設計。
→ どれが最も家計にやさしいか、シミュレーションが鍵です。
■ 当事務所でできること
財産目録・資金計画表の作成、延納・物納の申請書類の整理支援、境界や権利関係の事前点検項目の洗い出しを行います。税務申告・試算は税理士、不動産登記・測量は司法書士・土地家屋調査士と連携。
「売らずに払える道は?」という初期検討からご相談ください。期限内に最適ルートを一緒に描いていきます。